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24-2 俺のこと、そして
御坂と目を合わせる。
逡巡は3秒ほど。
「うん」
シンプルに肯定する俺に。驚くってより、感心したような表情を見せる御坂。
「否定すると思ってた」
「しても疑ったままっていうか、信じないだろ」
「まぁ、そうだね」
御坂がちょっと笑った。
「で……結果は?」
「彼女とするより欲情した」
気マズくない沈黙も3秒ほど。
「よかったんだ?」
「うん。すごく。俺、バイになるんだろうけど……ゲイに近いと思う」
「そんなに……あーえ……と。それでいいの? お前にとって」
「いい。相手してもらって、凱 には感謝してる」
「抱かれたの?」
「俺が抱いた」
御坂が微妙な顔になる。
「何か……意外だな。お前って、やるならネコのイメージだったよ」
そうなの!? 第三者から見て……?
まぁ……あの先輩含めて過去に俺を襲ってきたヤツら、みんなそう見てたんだろうけどさ。
それはまた別次元の話か?
犯すヤツは、相手がネコでもタチでもノンケでも犯す。レイプされる側の意思は不要だからな。
「そのつもりだったんだけど、途中で替えてもらった。凱はどっちも出来るって」
「へぇ……」
「凱がバイなのは内緒と同じで、俺のも内緒にしてほしい。俺と凱のことも」
「うん。誰にも言わない……あ。だけど……沙羅が疑ってる。家に送った時、將梧 がいなかったから俺、口走っちゃって。凱と昼飯食ったら家帰るって言ってたのになって。悪い」
「あーそれは……」
涼弥のこと抜きで説明するのは難しい……。
「沙羅に話したことあってさ。自分がゲイかどうか試してみたいって。だからかな」
「心配そうだったよ。ハッキリ何がって聞いてないけど」
「ちゃんと話す」
「お前と沙羅って仲良いよね。ビックリするくらい」
「よそがどの程度かわからないけど……うん。うちは基本、何でも話せるから」
「友達にはどこかガードしてるだろ?」
「まぁ多少は……でも最近、お前とは俺……けっこう素の自分で話してる気がする」
「今までは違う?」
少しバツが悪くて、薄く笑った。
「相手に1歩距離置くくらいがちょうどよくてさ」
「將梧、凱が来てから話しやすくなったよ」
自分でもそんな気がする。
楽になったからだ。自分のままでいていいやって思えて。
「そう……かもな」
タイミングよく。
凱が教室に入ってきて。俺と御坂の視線に気づき、カバンを置いてこっちへ。
「おはよー」
いつも通り屈託のない凱。
「おはよう」
「おはよう……」
挨拶を交わした凱が、片方の眉と唇の端を上げる。
「樹生 にバレちゃったの?」
御坂の瞳か口調か。
俺たちの纏う雰囲気か。
何か引っかかったのか、ただの勘か。
凱が言った。サラッとね。
「まぁな。お前、身体は平気?」
「うん」
「腰は?」
「ん。治った」
「あ……お前たちさ……」
俺の隣で、御坂が遠慮がちな声を出す。
「つき合うとかじゃないん……だよね?」
「は……!?」
「ねぇよ。將梧は友達」
否定して、凱が俺を見る。
「理由も教えたの?」
理由……?
男もオッケーか確かめるため。
何でか?
涼弥に告るため……。
涼弥を好きだって……御坂に?
俺の表情で、凱は自分の言いたいことが伝わったってわかった様子。
「言っておいたほうがいいかな? 試したの知られてるなら」
「そーね。そのほうが何かあった時、フォローしてもらえんじゃねぇの?」
涼弥にうっかりバラされる危険も減る……か。
「何? 理由って。將梧が、男と出来るか知りたかったからじゃないの?」
俺と凱のやり取りを聞いて問う御坂を、まっすぐに見て答える。
「そう。何で知りたいかっていうと……俺、好きなヤツがいるから」
「男……で? だってお前、彼女は……?」
「深音 とは偽装。向こうも同じ。恋愛感情はなくて……実験みたいなもの」
疑問は残ってそうだけど、俺の説明を理解した御坂にハッキリ言う。
「涼弥なんだ。杉原涼弥」
「え……!? マジで? でも、あいつ……」
思った通り驚かれた……けど、それだけじゃなく。ちょっと焦った感じが……。
「あいつが何?」
凱も御坂の動揺を感じたらしく、先に聞いた。
「ノンケなんじゃないの?」
「わかんねぇじゃん? 將梧みたいにさー」
「そうだ……ね」
「教えて、樹生。何かあんだろ?」
凱はもう何かあるって決めてる。
御坂がいったん伏せた目を俺に向けた。
「結局、聞けたんだ。沙羅がプレジールの前にいた理由」
え……今それ関係……ある……としたら……。
「プレジールって?」
「駅からちょっと離れたところにあるラブホ。昨日そこで沙羅と將梧の彼女に会ったんだ」
御坂が凱に情報を補充したところで。
「何だった……?」
尋ねる俺に、ためらいがちに御坂が答える。
「友達が……杉原と一緒に裏に行くの見かけてつけてきたら、あそこに入った……って」
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