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27-4 お前が治ってから、な?
口元の殴られた傷が痛むだろう……と。
唇も口の中も切れてるから。俺はともかく、涼弥は。
だから、軽いキスを心がけた。
実際、はじめは触れるだけのキスをして。ゆっくり唇を舐めたり、ちょっと舌でつつき合うだけだったのに。
ガッツリしちゃってんじゃん!
涼弥の舌が口の中に入り込んで。遠慮がちに上顎を舐められて、ゾクッとして舌を絡めたら……心地よさに頭のネジが1本飛んだ。
互いの舌を吸って、口内を舐り合う。
「んっ……ふ……はぁ、ん……あっ……涼弥……お前、熱 っ……耳……化膿してるんじゃ……んんっ!」
少しクールダウンしなきゃと思い、キスの合間に会話を試みる。
「大丈夫だ。抗生剤もらったからな」
一息で答えて、すぐに涼弥が舌を俺の唇の内側に這わせてくる。
「じゃ……飲まないと……っん……」
「あとでいい……ん……はぁっ……將梧 ……」
舌の横から裏をねっとりと舐められて、ジュッと吸われて。同じように涼弥の口内に舌を入れて舐め回す。
血の味がする唾液がこぼれないように、吸い尽くす。
あー……。
気持ちよくてやめられなくなる……けど。
これ以上勃ったら出したくなる……のはマズい。
学校と違ってチャイムはならないし、弥生さんも来ないはず……。
「涼弥……痛くないか? 口ん中切れたとこ……血が……」
唇が離れた隙に、涼弥の腕を掴んで少し距離を取る。
「どこも痛くない。將梧……」
「ちょっと待て。もうやめないと」
続けようとする涼弥を理性で止める。
「お前もつらくなるだろ? これが最後じゃないんだからさ」
「つらくって……」
一瞬、何がかわからない顔をした涼弥が視線を落とした。俺の股間に。
服の上から見て明らかなほどじゃないけど恥ずかしい。
「お前はなんないの? 学校でのだって俺、興奮したって言ったろ」
「俺はもちろん……お前とこうしてりゃ勃つが……」
視線を戻した涼弥が、すごく嬉しそうな顔をする。
俺の顔が火照る。
「お前が……本当に……」
「そうだよ。つらくなるから今日はもう……」
自分の腕から俺の手を掴んで外し、そのまま引き寄せる。
「つらくなったら俺がイカせてやる。だから、もう少し……」
「りょ……うっ……んっ……」
涼弥の熱い舌が俺を求めるのに、応えずにはいられない。
おまけに。
イカせてやるとか言われたら、よけい腰回りが疼くだろ……!?
つーか、どうやって!?
「好きだ」
「涼弥……ちょっ……!」
背中が長座布団について、涼弥の顔の向こうに天井が見える。
好きだっつって押し倒すって……。
その気になってんのか、お前……!?
「ん……は……將梧……はぁっ、んっ……」
チュツピチャって音と荒い息づかい。
目を閉じて涼弥の舌の感触に集中して、気持ちいいように自分のも動かしてると……だんだん、ほかのことが遠のいてく。
熱い刺激が口の中で快感を生むごとに、理性がガリガリと削られてく。
でも今日は、その3。
欲望に身を任せちゃダメだ。好きな相手を前に、好きな相手の身体を気遣えるような男じゃないと。
だけども。
触れてないけど近い涼弥の胸を押し返そうにも、ヒビの入った肋骨に障りがあると思うと躊躇する……てか、出来ない。
「っん、は……う……んっ! 涼弥……!」
なんとか、中断させるに足る音量で呼ぶと。
やっと俺から口を離して上体を起こした凉弥が、乞うような瞳で見下ろしてくる。
「キスだけっつったじゃん?」
「そうだ」
「嘘つけ。このまま犯しそうな勢いだった。今はマズいだろ。やるなら一月後、お前が治ってから。な?」
「やるなら……?」
涼弥の表情が無に近くなってる。
「涼弥? どうした?」
ハッとしたみたいに頭をブルブルと振る涼弥が不可解で。
「おい。大丈夫? 頭の回線どっか切れたか?」
「將梧……お前、俺に……抱かれる気あるのか?」
「え……あるけど。つーか、こんなキスしてんのに。ないってあるの?」
「あるのか……マジ……で……」
瞳が。涼弥の瞳が、どっか別次元見てる。
「何だよその反応。俺に抱いてほしいのか?」
膝立ちになった涼弥から、挟まれてた右足を抜いて身体を起こす。
「悠のこと抱いたんだろ? お前、タチなんじゃないの? ネコがいいならそう言えよ」
異次元を見てた涼弥の瞳が、俺へと戻る。
「お前を……抱きたい」
「今はダメだ。治ってからな」
「ああ……わかってる……治ってから……治ったら、將梧を……俺が……治ったら……」
なんか、ひとり言か呪文みたくなってるよ?
「涼弥? 本当にどうかしたのか? 変だぞお前……」
ガバッと抱きすくめられた。
「おい! ヒビ! 胸押しつけんな!」
「將梧。懺悔の2つめだ。お前の親友ってツラして……お前を抱きたいって思ってた」
凉弥の首と肩のとこに顎をつけた格好のせいで、顔は見えないけど。悪事を白状するみたいな声してる。
「それは……そういうもんなんだろ? 好きならさ」
「お前とやるの……想像した。何度も……」
「それもそういうもんっていうか、自然なことだろ」
「いつも……お前とのセックスいろいろ妄想して抜いてた」
いろいろ……!?
俺、コイツの頭ん中でどんなことされてんだ……?
「それ……も。まぁいい……よな? 何で抜くのも、お前の自由だろ」
「もうひとつある」
耳元で、涼弥が息を吐く。
「土曜に話があるってのは、お前に告るつもりだった。フラれると思って……なら、いっそ襲っちまおうかって……」
は……!?
「それはダメだろ。何考えてんだ? お前そんな人間だったか?」
腕を振り解こうとする俺を、涼弥が押さえ込む。
「力入れるな! ヒビんとこ痛める!」
言っても、涼弥は全く緩めず。俺の首筋に埋めた顔も上げない。
「違う……」
「何が!」
怒鳴る俺を、さらにきつく涼弥が抱きしめた。
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