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★30-9 まだだ

「握れ……一緒に」  そう言って。片手を壁について身体を支えた涼弥が、もう一方の手で俺の手をペニスに持っていく。 「あ……涼弥……んっ……」  唇を舐められて。反射的に出した舌を、涼弥が口内に迎え入れる。ねっとりしたキスをしながら、涼弥が腰を動かした。 「っは……あッ……んんッ……!」  ぎこちない手つきで2本のペニスに添えた俺の手と、軽く握り込む涼弥の手の内側で。俺のペニスを、涼弥のそれがズリズリと擦る。  これ……扱かれたり舐められたりするより……興奮する……!  裏同士が擦れて、カリが引っかかる刺激と。それよりも何よりも。  この向かい合った感じ。涼弥の動き。熱い肉の感触。  疑似セックスじゃん……!  そう思ったら、脳内もその気になる。気持ちよさを感じるセンサーが上がったみたいに、快感ゲージがアップする。 「んッ……涼弥……っはッ……んんッ……」  唇が離れて目を開けたら、俺を求める涼弥の瞳が揺れてる。 「気持ちいいか……?」 「いいっ……お前の……あッ……!」  もうイキたくて堪らない。  もっと強く、激しく動いてほしい……! 「もっとっ……強く……こすっ、て……あ……」  涼弥が握ってた手を離した。ペニスの密着度が下がり、動きも止まる。 「まだだ。まだイカねぇぞ。お前もイカせねぇ」 「何……で……りょう……んあッ……!」  左右同時に。乳首にジクリと快感がきて腰が浮いた。左は涼弥の口の中で舐られ、右は指の腹でクリクリと捏ねられ押し潰される。 「やっ、やめッあッふ……んッ……や……あ、くッ……!」  思わず。ペニスを2本、ギュッと掴んだ。その刺激で、本能的に腰を突き出す。 「ダメだ……」  涼弥の手が、俺の両手を股間から引き剥がして壁に留める。俺を見つめながら、涼弥がゆっくりと腰を振る。  位置を固定する手を失くしたペニスが、涼弥の動きで不規則に擦れ合う。  もどかしくて、不意にくる絶妙な快感がかえってつらい。 「や……涼弥……放せ……っあッ……んッ……」 「っは……もう……少し……」 「も……イキた……い、お願い……」  もう限界……フワフワした快感じゃなくて、ガツンとイカせて……! こんな焦らすの……反則だろ……!? 「んッ! 早く……りょう……やッああッ!」  俺を離した右手を半分の輪っか状にして、ペニスをピタリと合わせた涼弥が。激しく扱くように腰を振り始めた。  突然、ほしかった刺激を与えられてのけ反る俺の首筋に、涼弥が舌を這わせる。ジユッと強く吸われてピリリと痛い……それも、プラスの快感にしかならない。 「あッんッ……や……もうっイキそッ……んんッ……」 「將梧(そうご)……一緒にッ……」  快楽を耐える皺を眉間に刻んだ涼弥の顔がぼやける……。  ペニスの先っぽを、指でグイッと押される感触。 「っひッああッイクッんッあッ……んああッ……!!!」 「くッ俺……も、んッうッ……ッ……!」  ペニスの根元に溜まった快感が放出される。  ビクビクビク……ビュツドビュッビュクッ……二人分だ。  温かい液体が腹にかかる。独特の青臭い匂い。 「はぁっ……はぁ……はぁ……」  精液を吐き出して、やっと得られた解放感に力が抜ける。ズルリと下がりかけた身体を涼弥が支えて、そのまま俺を自分の腿に乗せて湯船の中へ。  この恰好……なんか恥ずかしい。でも、今は力入んない……。  まだ整わない息を吐きながら、涼弥が微笑む。 「よかったか?」 「うん……」  涼弥の背中に腕を回す。湿った胸に頬をすりつけると、すげー速い心臓の音。 「お前、意地悪……けど、気持ちよかった」 「悪い。かわいくて……つい、な」 「それ。かわいいって言うのやめろ。俺、男だぞ」 「わかってる」  涼弥が顔を上げた俺の頭を撫で、自分の胸に引き寄せる。 「男でも。ねだるお前……かわい過ぎ……つッ!」  目の前の皮膚に歯を立てた。鎖骨の下、胸筋で盛り上がったところ……あ! 「ごめん! 忘れてた! 骨……平気か?」  安静にしてろっつったの俺なのに!  治るまでセックスしないってのも、ヒビに響くからなのに!  快楽にかまけて俺、涼弥に腰振らせてんじゃん……! 「何ともない。言いつけ通り、抱いてないだろ」 「そうだけどさ。今の……似たようなもんだったから……」  目を細めて、涼弥が口角を上げる。 「似てても違うが……お前がここまでしてくれるとは思わなかったぞ」 「それは……」  俺だって思ってなかったよ?  いっこオーケーにしたらなし崩し的に……なったな。やっぱり。  気持ちいいことに弱いのか俺?  感じたかったんだ。涼弥を。  でも。  ダメじゃん……。 「俺が欲望に負けたから。もっと鍛えなきゃな。メンタル……忍耐力か」 「必要ない。そのままのほうが……」 「何だよ。攻めて楽しめるってか?」  涼弥が苦笑する。 「嫌いになるか?」 「ならない。知ってるくせに」 「早く抱きたい」 「3週間後な。文化祭準備でどうせ忙しいだろ」 「お前は待てるのか」 「待つ。ケガが治るまで」 「耳は腫れ引いたぞ」  確かに、右耳の穴は塞がって赤茶の窪んだ点になってる。 「化膿しなくてよかった。あとは肋骨な」  切ない瞳で見つめてもダメだ。 「ヒビ悪化させる心配、腰振るほかにもうひとつ。俺が……」  眉を寄せて問う涼弥の胸に手を当てる。 「お前の攻め止めるのに、蹴り入れなきゃなんないかもだろ」 「將梧……」  否定しない涼弥に軽くキスして、笑った。

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