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41-1 次は手加減してあげてね

 涼弥と一緒にシャワーを浴びた。  腰と脚のつけ根が痛くて。立ったり屈んだりがつらい俺の身体を、涼弥がかいがいしく洗ってくれた。エロい手つきじゃなく、サクサクと。  ペニスの勃ち具合がアップしてた涼弥に、抜こうかって聞いたけど……今日はもう、お前は何もしなくていいって辞退された。  でもさ。  セックスのとき俺、されるがままで何もしてないじゃん……!?    これでいいのか……って、よくないだろ。  俺も何かしなきゃ。つーか、したい。  受けがやることって何だ?  しゃぶって勃ててやるとか、乳首舐めて気持ちよくさせるとか?  けど。  涼弥の……きっと、すでに勃ってるだろうし。  でも……アリか。  気持ちいいことは、何でも歓迎なはず。  俺だって。攻めて、よがる涼弥の顔見て楽しみたいもんな!  受けの友達に、普段何してるか聞いてみよう。結都(ゆうと)(かい)、夕希……あと、新庄も経験豊富そうだ。紫道(しのみち)には……まだ聞けないな。  なんて考えながら、洗面所で頭と身体を拭いてたら。 「おい。今、玄関開いたぞ」  涼弥の声で我に返る。 「沙羅だろ。声かけてくる。先に部屋行っててもらうよ」  サッと足を運ぶなんて当然出来ず。痛む腰を手で押さえつつ、一歩ずつヨロヨロと廊下へ。 「あ……」  玄関にいるのは、樹生(いつき)だった。 「沙羅は……?」 「いるよ。外。あー……駅で電話しても出なかったからさ。お前たちが取り込み中じゃないか、俺が先に確認しに入ったんだけど……」 「そうか……悪いな」 「終わってるんだよね? お前……大丈夫?」  超スローで4メートル弱を進む俺を待って、樹生が尋ねる。俺が何でこうなのか、沙羅に聞いて知ってるせいか……眉を寄せるも、驚きはない。 「男にやられるって、そんなしんどいの?」 「大丈夫。はじめてで慣れてないだけ……たぶん」 「おい。ジロジロ見るな」  涼弥の声が後ろから……すぐに本体も横にきて、俺を支える。 「お前と同じ目で見てないって。俺、男はマジで許容外」 「わかんねぇだろ」 「わかってるの、俺は。杉原さぁ、心配し過ぎはやめろよ。学校でそれ、逆に変なの引き寄せるぞ」  樹生の言葉に、俺も眉を寄せた。 「何、変なのって」 「人でも物でも。ガッチリ厳重にガードされてるのって、価値あるもんや重要なもんだろ。興味引くし、中にはそういうのに意欲湧くチャレンジャーもいるからさ」 「あーなるほど……」 「そんなヤツはぶっ潰してやる」 「敵増やすだけだって」  樹生がふうと息を吐く。 「適度って難しいよね。嫉妬も独占欲も心配も……でも、出来るよ。二人なら」 「ん。ありがとな」  涼弥を見やると、無言のまま俺を見た。樹生の言葉に、納得したのかしないのか……。 「まぁ、とりあえず。お前たちが半裸でそこいると、沙羅が入れない」  玄関のドアが開いた。  腰にバスタオル姿の俺と涼弥を見て、沙羅が肩を竦める。 「のん気に喋ってるなら大丈夫かと思って……」 「ごめん。今上行く」 「將梧(そうご)。どうだった?」  今それ聞く? わざとか? 「すげーよかった。腰が痛い」  簡潔に。事実を述べた。  沙羅の視線が、俺から涼弥へ。 「次は手加減してあげてね」 「するつもりだったんだが……」  やわらかく。幸せいっぱいって感じの笑みを浮かべる沙羅に、涼弥の表情も緩む。 「かわいくてよ……」 「やめろ」  ソレ以上、人前で言われるのは恥ずかしい。よろしくない。 「俺は平気だから。行くぞ、涼弥」 「あ、杉原」  樹生が呼び止める。 「もう帰るよな? 服着るの待ってるから、一緒に出よう」 「は!?」  涼弥だけじゃなく、俺と沙羅の顔にもクエスチョンマーク。 「將梧、ヨレヨレだろ。もし、お前が沙羅を襲っても助けられない」 「は……!?」  俺も声を上げた。 「何だそりゃ!? 俺が沙羅をって、あり得ねぇ。何バカ言っ……」 「それ。俺が將梧をってのと同じ。あり得ないのに心配されると、心外だよね?」  開いた口のまま数秒固まり、涼弥が息を吐く。 「わかった。お前の言う通りだ」 「お前から將梧を獲るヤツなんか、友達にはいない。もっと信用してよ」 「ああ……そうする」  ちょっと空いた間に。 「じゃ。服着てきて。夕食の用意するわ」  明るい沙羅の声。 「涼弥も食べる? お腹空いたでしょ」 「いや。今日は家で食う」 「樹生は? 送ってくれたお礼に、食べてく?」 「俺もパス。こんな時間に、彼女の家いる勇気ない」 「まだ8時前だけど」 「うん。でも、帰るよ。またね」  沙羅に微笑んで。 「將梧たちも、また明日」  ヒラヒラと手を振って、樹生がそそくさと出て行った。 「え……と。服着よう」  今度の間は、俺が破る。 「沙羅、先上がって。俺、階段……時間かかるから」 「連れてってやる」 「うわっ……」  待て。ダメだって言うより早く、涼弥が俺を抱き上げた。とっさに首に手を回して掴まる俺に、いたく満足げな様子で。そのまま階段を上り始める。  見上げる沙羅と目が合った。こっちも、満足そうに輝く……腐女子の瞳だ。  小さく溜息をついて、涼弥の胸に額をつけた。

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