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43-1 今度聞いてみたら?

 起きたら、9時40分だった。  昨夜は、街に出た涼弥が無事家に着いたって連絡を受けてから寝た。  午前1時を回ってたけど、何故か休みの前の日は夜更かしが苦じゃない……寝坊出来るのがわかってるからか。  ぐっすり眠って気分スッキリ。腰の痛みもすっかり引いて、体調は万全だ。この万全を……今夜までキープしたいところ。  ハッキリ言うなら。  治ってすぐ腰痛くなることしないにしよう……!  いや。  少し語弊があるか。  腰痛くなるほどガツガツやらないにしよう……が正しい。  昼過ぎに、涼弥んち行くし。  涼弥の家族は留守らしいし。  俺、涼弥が好きだし。  涼弥は俺が好きだし。  俺たち、つき合い始めたばっかだし。  高校生だし。  一緒にいたら……エロい気分になるだろうし。  つーか。  おととい初セックスして。昨日、『明日か?』って言うくらい。  涼弥はやる気満々じゃん……!?  だから。  今日セックスしない可能性は、限りなく低い。  もちろん、俺だって嫌々なんてことはなく。したい。  したい……けどさ。  適度に! ほどよく! やさしくやろうよ!  と思うわけだ。  大丈夫。キッチリそれ伝えてからやろう、うん。  適当に朝昼兼用飯を食おうとしてキッチンに行くと、ちょうど沙羅が同じ目的でいた。  機嫌がいいようで、俺の分も用意してくれて。焼くだけのピザとゆで卵入りサラダの飯を一緒に食った。  食後のコーヒータイムに、深音(みお)と和沙のことを聞いてみたところ。 「私と海咲(みさき)も、突然過ぎてビックリよ。今日いきなり、『和沙とつき合うことになったの』って」 「深音、先輩と別れたって平気そうに言ってたけど……大丈夫だったか? 暫く落ち込んでたとか……」 「昨日まで丸3日。学校休んだわ」  沙羅が溜息をつく。 「ずっと好きだった人とうまくいっても、続くかどうかは別なのね。あの子と相手の先輩は、お互いをよく知ってたわけじゃないから……よけいにかも」 「……深音が、相手に幻滅したってことか?」 「そうみたい」 「で……和沙と……?」  ためらってから続ける。 「今思えばさ。和沙は深音のこと好きな素振り、あったかもしれないけど。深音は……先輩一筋だったじゃん?」 「そうね」 「お前たちと仲良くなったの、この夏からなんだろ?」 「そう。8月のハンドメイドサークルに、うちの学園から一緒に参加してて」  あーなんかアクセサリー作ってたっけ。 「和沙って雰囲気あるじゃない? あの人カッコイイよねってよく噂されてたし、顔見知りではあったの。でも、親しくなったのはそれから」 「深音……流されてじゃないって言ってた。先輩と別れて3日……4日か? その間に、和沙と何があってそうなったんだとしても……」  昨日の二人を思い出す。 「うまくいくといいな」 「きっと大丈夫」  沙羅が微笑んだ。 「好きになる決定打は、時間じゃないでしょ? 言葉とか行動とか……人に依るけど」 「お前は?」  ふと興味が湧いた。  今まで聞いてなかったこと。 「佐野が海咲ちゃん狙ってるせいで、樹生のこと知ってたよな。4人で遊んだりもしてただろ」 「もっと大人数のこともあった。あんな遊び人が二人もいたら、海咲ひとりじゃ危ないからよ」 「まぁな。で、お前は樹生の話相手してたのか?」 「その日の夜のお相手見つけていなくなるまで、ね」  沙羅の声がトゲトゲしくなる。 「樹生のナンパぶりに呆れたし。この男についてく女もバカだって、いつも思ってたわ」 「なのに……何で?」 「……私、中学の頃、彼氏いたじゃない。ひとり。大したことしてないおつき合いだったけど」 「うん」 「そのあと、樹生の前に……はじめての人がいたでしょ。將梧(そうご)のとこの1コ上の人」  沙羅の初体験の相手は、ほとんど知らない。  うちの学園の男だって以外、沙羅が話さなかったからだ。  唯一知ってるのは、つき合ったわけじゃないってことだけ。 「その人に……会ったの。みんなといる時」  沙羅が目を伏せる。 「動揺しちゃって。それ隠すのも難しくて」 「お前、気強いのに脆いとこあるからな」 「その時、樹生が……そばにいてフォローしてくれた」  目線を上げた沙羅は。認めるのは悔しいけど、まんざらでもないって顔してる。 「10回近く一緒に遊んでてはじめて。女と消えずに、みんなと最後までいたわ」 「お前と、だろ」 「それが決定打とまでいかなくても、きっかけにはなったかな。將梧は?」 「え……俺は……」  涼弥を好きになったのって……いつだ?  ハッキリ自覚したのは、(かい)が来て深音とセックスした日だけど……もっとずっと前だよな。  春のレイプ未遂の時には、きっともう…。 「いつの間にか、そうだったっていうか……気がつくより前から好きだったの、気づかないようにしてた……みたいだからさ」 「そっか。ちっちゃい時から一緒だもんね。好きって芽が出て、どんどん大きくなってったのかも。それが恋愛感情だって知らないうちに」 「うん。そんな感じ」 「周りのほうが先に気づくくらい、將梧は無自覚な期間が長かったから。涼弥はよく耐えたわ。あ……今度聞いてみたら?」 「何……?」 「いつ、どうして。自分は將梧が好きだってわかったか」  いつ、は……小6って言ってたな。  どうして……か。  どうして気づいたか? 「どうして俺を……ってのも? 理屈じゃないか」 「そうね。結局は、その人だからってことじゃない?」 「ん。そうじゃなきゃ……」 「そこの部分がなくなったり嘘だったら、好きじゃなくなっちゃう」  頷いた沙羅が続けた。 「この人のここが好きって思えても、それだけじゃない。そのせいで……嫌なとこがあっても嫌いになれないの」 「お前が言うと、説得力あるよ」  うっかり口にすると。 「將梧も気をつけてね」 「何を?」 「涼弥は、將梧が何しても嫌いにならないはず」  沙羅の瞳が、意地悪げに笑い……おなじみの腐の輝きを宿す。 「その代わり、お仕置きするの」  また……。  好きだな? お仕置きってワード! 「前に言った通り、タフなセックスだったんでしょ? お仕置きは、普段より何倍もねちっこく攻められるから」 「大丈夫。あいつが嫌がることはしない。浮気とかさ」  あからさまな嫌味で対抗するも。 「でも、うん。気をつけるよ……ありがとな」   今回はリアルに基づいた想像が浮かぶ分……ちょっと本気で気をつけようと思った。

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