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第32話 とっとと
「今日は……ここまで?」
「んーそうだな。ここまで」
「そっか……超残念……」
「……」
しょんぼりする薫を横目で眺め、ゴクリを喉がなる。
……そんなに期待しているなら、この続きも是非したい……が!しかし!
あのうちのババァの存在は消すことができないし、突っ込んでる最中にバーンとドアを開ける母親が脳裏に浮かんで仕方がない。
……絶対やりそうだもんな。
居ない時だ居ない時!そういう時をぜひとも狙っていこう!
ギュッと薫を抱きしめてから、二人でベッドへと転がる。
スゲーな、今この腕の中に薫がいる。
しかも今まで隠し抑えていた想いを伝え、幼なじみから恋人という関係になってしまった。
……か、感動、胸アツ……
「薫、俺……大事にするからな」
「うん!嬉しい!てっちゃん大好き!」
「俺もだ、大好き」
薫の柔らかな頬を撫で、優しいキスを沢山して微笑み合う。
まさかまさかこんな展開なるなんて夢にも思わなかった!
諦めていた人と両思いになれるなんて、イチャイチャし合えてるなんてスゲー嬉しい!
「じゃぁてっちゃん、頑張って……」
「ん?」
「とっととあの女と別れなくちゃだね」
「……お、おう」
無表情の薫の口元がニヤリと笑った。
え何、か、かわわ……
そしてその赤い唇がゆっくりと俺の唇に重なって、慣れないキスをしてくれた。
色っぽい口してるのに、キスはまだ素人でそれがギャップ萌えで俺、死にそう。
そうだ、忘れてた。俺は現在彼女持ち。
薫が言うようにまやちゃんと、とっとと別れなくてはいけない。
つき合ってから数日で別れるなんて申し訳ないけど、そこのところちゃんとしておかないと心置き無く薫とつき合えない。
……
……ビンタ覚悟で切り出そう。
「さすがにベッド男二人は狭いけど……一緒に寝るか?」
「うん、てっちゃんにくっついていたい」
「……俺も」
二人で普通に寝てるくらいなら、親が見てもなんとも思わないだろう。
狭いベッドに抱き合うように向かいあって横になった。
あーあったかい。
少し蒸し暑いけど、そんなこと全然気にならない。
それくらい幸せでドキドキしていた。
目の前の薫は眠そうでウトウトしている。そんな表情すらも可愛いと思ってしまう。
……俺本当にこいつのこと、好きなんだわ。
そんなことを考えつつ、薫のツンとした髪を撫でながら、自分もあっという間に眠りについていった。
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