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スッキリ解決……?

「で、この子? 秀一の相手って」  俺の目の前に座るのは、黒髪ストレートのいかにもキャリアウーマンといった人。 「紘希な。紹介する。こいつが婚約者の麗子」 「よろしくねー」  藤沢さんの家に呼ばれてからずっと固まりっぱなしだった理由はこれだ。  めでたく藤沢さんと付き合うことになって舞い上がっていたのに、ここに来て突きつけられた現実。  そんな中、藤沢さんは俺の横に座ると、麗子さんの目の前で俺の腰に腕を回した。 「え、待って……?!」  それを引きはがそうとすれば、「心配すんな」と腰を引き寄せられただけだった。 「単刀直入に言うと、協力結婚ってやつな。こいつはレズビアンで、パートナーもいる。結婚した方が色々と楽だからな」 「紘希君だっけ。うちの子と結婚してくれると有り難いんだけど。まぁそれは追々」 「は、はぁ……」  全く理解が追い付かない。  ボーっと麗子さんを見ていると、まだ来たばかりだというのに麗子さんは立ち上がって俺に手を振った。 「私はお邪魔だから退散するわ。あとはごゆっくり」 「おー、またな」  婚約者である麗子さんを見送りもせず、藤沢さんは俺の顎をくいっと持ち上げると、俺の目を覗き込む。 「スッキリしたか?」 「……ま、まぁ」 「じゃ、俺もスッキリさせてな?」 「――!」  声を発する前に口を塞がれ、ソファーに押し倒された。  藤沢さんは少し強引だ。でも、それが好きだったりするから、俺は黙って流される。  着けてきた赤いネクタイはまず初めに解かれ、ローテーブルの上に放り置かれた。  全てのキッカケはこの赤いネクタイ。足を向けて寝られないな。そんなことを思いつつ見ていると、 「紘希、余裕だな」  と、藤沢さんが意地悪な笑みを浮かべた。    赤いネクタイが再び通常の用途以外に使われるまで――あと少し。

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