7 / 7
7
辿り着くまでに裸に剥かれた身体がベッドに沈む。
青町のシャツも剥ぎとって放ると、文字通り食らい尽くすようなキスをしながら、汗ばんだ肌を撫でられた。
熱い手が鎖骨をなぞり、胸元を這いまわりながら徐々に下へと降りていく。腰骨のあたりを強くさすられると大袈裟なほど身体が跳ねた。
無理だ。無理。
気持ちいい。
青町に触れられている、その事実にしか俺はもう、気持ちよくなれないんだと悟った。
首筋や耳の後ろ、弱いところばかり唇と舌で嬲られて、バカみたいに喘ぐ声が止まらない。
「レキ君に触られて、俺が我慢できるはずないやん……わかってよ」
耳元でそんなことを呟く青町は、ガチガチになった股間をずっと俺の腿に押しつけている。余裕のなさは似たようなもので、もはや恥ずかしさもなかった。
青町が俺に触れる。まるで自分のもんみたいに。
好き勝手に全身撫でまわして、膝を割って間に入ってくる。そうするのが当然みたいに。
ふざけんな、調子乗ってんじゃねーぞ。
俺がお前のなんじゃねー、お前が俺のもんなんだよ。
間違えんな。
喘ぎながら切れ切れに言うと、青町はちょっと困ったように笑った。
「そういうとこ、めんどくさいしクソ生意気やのに、可愛くてしゃーないねんな……ほんま、何でなんやろなあ……」
青町の手が伸びた先にある俺のも、まあ負けず劣らずガチガチで。ほとんど一撫でで呆気なく弾けた。
早さを揶揄するどころか青町は「あかん、俺も入れた瞬間に出そう」と唸りながら後孔に指を突っ込んでくる。
性急な動きで慣らされて、先端を当てがわれたとき、またどうしようもない涙が勝手に溢れた。
「そんな泣かれたらレイプみたいやんか」と頬を撫でてきながらも、身体のほうは容赦なく腰を進めてくる。引きつるような痛みが走るが、止める気にはならない。
青町の熱に暴かれることに陶酔すら覚えた。
痛みも束の間で、青町とだけ回数を重ねてきた身体は、数ヶ月ぶりでもその形をちゃんとわかっていて。すぐに快楽の波に飲み込まれる。
「いっつも布団でエッチしとったやんか」
指と指が絡められる。見上げる青町はこめかみから薄っすら汗を滴らせ、眩しいものを見るように目を細めていた。
「ベッドってやらしいな、ぎしぎしゆーて」
強く押し込まれて交わりが深くなる。熱い息を漏らしながら唇を寄せられて、溺れそうになりながら応えた。
青町のせいで、軋むベッドの音がやたら耳につく。ひとに言えないことをしている気分になって中が疼いた。
「俺な、レキ君がおらんと」
大きな動きで奥までの抽送を繰り返しながら、青町が言う。
荒い息遣いとケモノじみた目の奥に、迷子の子供みたいな表情がちらつく。
「寝坊するんやないかって、毎日不安やねん」
脚を抱えあげられて角度が変わると、弱いところにピンポイントで当たるようになって、俺は悶えながら青町の腕に爪を立てた。性感を知り尽くされているのがムカつく。でも嫌ではない。
「レキ君は? どう?」
そこきもちいい、と答えたら「それはよかった。けどそっちやなくてな?」と言いつつ同じところを何度も抉られた。
声にならない悲鳴。仰け反って無防備な首をまた噛まれる。自分の中がひくついて青町を悦ばせているのがわかる。
「レキ君もさあ」
余裕なんかないくせに、いつになく良く喋る。収録中もそんくらい喋れあほ。俺がなんにも言えないこんなときばっかり饒舌になりやがって。しね。
涙でぐずぐずの視界に青町を映したら、青町もなんだか泣き出しそうな顔で笑っていた。
「俺おったほうがええんちゃうの」
疑問形で言っておきながら、返事なんて待たずに青町は俺の身体をひっくり返した。ぺったりと俯せて、膝を立てることすら許されずに、後ろから強く突き上げられる。
あまりの衝撃に視界が白くなり、背中に降ってくる青町の汗の粒に、イきそうになって。
今にもぶっ飛びそうな理性の狭間、青町だけが俺の世界になる。
「なあ、レキ君」
うるせえ。うるせえ。うるせえ。
もっと呼べ。
クソ青町。
アラーム音を響かせる携帯に手を伸ばす。
湿ったシーツの感触に眉を顰め、目を開くと間近にあった青町の寝顔に、ぼんやりと見入る。
夢じゃなかった。
空が白むまで貪りあって、気絶同然にそのまま寝落ちた。
入り時間を聞いたらすぐにアラームをかける習慣があってよかったと心から思う。コンビ揃って遅刻なんて無様は回避できた。
寝たのはたぶん、せいぜい二時間かそこらだろう。
その割に頭はとてもすっきりしていた。
身体のほうは、腰と股関節が痛むので何とも言い難いが。数ヶ月ぶりに深く眠れた、ような気がする。
男二人にシングルベッドは狭いが、湿気た布団よりはいくらかマシな寝心地だった。
間抜け面を晒して、未だ目覚める気配もない青町を、俺は今から引っ叩いて起こすわけだが。
一言めは何と言おうか。それが決まるまで、もう少しだけは寝かせておいてやろうと思う。
了
ともだちにシェアしよう!