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第1話
綺麗な人。
容貌端正ってこういう人の事を言うんだな、というのが第一印象でした。
ドアの上枠に頭をぶつける程背が高くて、細くて、格好良くて、一瞬にして目を奪われた。
「はじめまして。
1年A組を受け持ちます、長岡正宗です。
担当教科は国語です。
クラスを持つのははじめてなので至らない部分も多いと思いますが、みなさんの学校生活が潤滑に進められますようお手伝いが出来たらと思います。
宜しくお願いします。」
礼儀正しく頭を下げたその人は長岡先生。
生まれてはじめて人に見惚れた。
今考えても可笑しな話だけど、生まれてはじめて見惚れた人は同性でそれも担任だった。
セットされた髪も、きちんと着こなしたスーツもとてもよく似合っている。
こんな綺麗な人はじめて見た。
偏見だが公務員には見えない。
じっと見ていると担任と一瞬目が合った。
な、んだ…あの目……
気のせい……?
一瞬絡んだ視線。
担任はぞくりとする目をしていた。
だけど次の瞬間、それは愛想笑いに変わる。
ほんの一瞬。
瞬きの間に口角を上げ笑顔を作っていた。
綺麗に口角が上がっているけど、本当に笑っているのだろうか。
どこか線引きをしている様なその笑顔。
この人の笑った顔を見てみたい。
単純な好奇心。
胸がドキドキと騒ぐのは新しい学校の、新しいクラスだから?
その時の俺はまだ何も知らない。
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