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第1話
花が溢れた小さな花屋。
此処が、俺の職場。
店先に並べたハーブの苗から爽やかな香りが青々しい店内に流れ込む。
緑のにおいのするこの空間に、君は足を踏み入れた。
「こんにちは。」
「いらっしゃいませ。」
ダボっとしたパーカーを羽織って身体を隠した君。
それでも解る日焼けを知らないその人を見た時、あまりの白さに若干引いた。
気を引き締め直して営業スマイルを張り付ける。
「あの…、花をください。」
「はい。
どんな花が良いですか。
植木、花束、アレンジメント、色々ありますが。」
「え…、あ、そっか。」
男性客は少し考える。
キョロキョロと店中を見渡して、すぅと息を吸った。
「花束を。
あの、花屋さんの好みのでお願いします。」
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