5 / 12
第5話
相手にも都合がある。
理由がある。
俺は、そんな当たり前の事を忘れていたのだろうか。
絶対に飾って貰える、なんてただのエゴだ。
勿体ない、なんて…。
「花屋さん?」
「え…?」
「ボーッとしてましたけど、大丈夫ですか?」
しまった
仕事中だった
「大丈夫です。
えっと、お釣りですよね。」
チェッカーから小銭を確認しながら取り出し、もう1度確認をして君に手渡す。
君は心配気に俺を見たが、営業スマイルを張り付けると胸に抱いた花束を見た。
とても優しい目で。
「大切に飾ります。」
「え、プレゼントじゃ…」
「あ、僕の部屋に…。
殺風景で……」
「いやっ、すみません。
そう言う意味じゃなくて」
急いで頭を下げると、ゴンッと音と共に頭部に衝撃が走った。
「いっ、てぇ…」
「い、た…っ」
勢いよくぶつかったお互いの頭。
俺達は同時に頭を下げたらしい。
途端に吹き出した君の笑顔が、俺の心を捕らえた。
俺と君の出会い。
ともだちにシェアしよう!