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第11話

真っ白な紙を持つ手に力が入る。 病院に花の配達に行った時、顔色の悪い樹くんを見掛けた事があった。 俺は、知っていた。 ボコボコと涙の痕が残っている紙に、新しいそれが落ちていく。 「……ぅ…、ッ」 なんだ、両思いだったのか。 言えば良かった。 遅すぎた。 大人になって……、いや、義務教育が済んでから初めて声を上げて泣いた。 いい歳のおっさんがわんわんと泣くもんだから往来の視線を浴びたがそんなものどうだって良い。 手紙を胸にしっかりと抱いてボロボロ溢れる涙を拭いもせず、ひたすら君の笑顔を思い出してばかりいた。 笑顔が良く似合う、俺の大好きな人。 ごめん。 この手紙は棄てません。 君から貰ったものは全部、すべて、抱いて生きる。 君の分まで、なんて綺麗事は言わない。 だってこれは僕の人生だし、君の人生は君のものだ。 だから、君の思いを抱いて今日も生きるよ。

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