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第10話

『花屋さんへ いつも、綺麗な花をありがとうございました。 お陰で暗い病室が明るくなっています。 僕は生まれつき心臓が弱く長くは生きられないと言われていたそうです。 小さい頃、何度も両親に謝られたのを覚えています。 僕自身もそのお陰で物心付いた時から自分の病気を理解していたし、両親や両親に甘えたいのに我慢してくれている妹の為にも安静にして長く生きようと思っていました。 運動も駄目、薄味の食事ばかり、生きる為にしてはいけない事が沢山あります。 そこまでして生きるってなんだろうと考えた事もありました。 そんな時、主治医に言われたのが心臓移植でした。 移植が成功すれば出来る事が沢山増える。 我慢も少しになる。 だけど、僕はそれを断りました。 移植をするという事は、誰かの死を待つ事です。 僕はそんなの嫌でした。 自分の為に誰かのを死を待つなんて残酷過ぎるでしょ。 それから、僕はこの心臓と生きる事にしました。 僕の心臓は僕のものだから、それが自然の摂理です。 でも、龍生くんと出逢ってもう少し長く生きたいと思ってしまいました。 欲が出てしまいました。 神様はそれを見逃してはくれなかった。 真っ白な病室に色を付けてくれるのは龍生くんの束ねてくれた花です。 とても綺麗です。 本当は、龍生くんの花に囲まれて焼かれたかったけれど、それは引かれそうだから我慢します。 僕は、龍生くんが好きです。 僕はもうこの世にいないし、男から告白されても気持ち悪いだけだし、きっと花屋さんにはその方が良かったと思います。 この手紙をもし読んでくれていたら、読み終わったら棄ててください。 そして、全て忘れてください。 お願いします。           樹』

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