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第10話

 電車を待っているときも、電車の中でも知矢のことが心配で気になって仕方がなかった。途中何回か電話をしてみたがやはり電源が切られている。  ……なにか、あったのだろうか?  それともまさかこんな時間まで遊び歩いている? もしそうだとしたら許さない。  不安と苛立ちの狭間で典夫は強く思う。  知矢はまだまだ幼く世間知らずだ。そのうえ周りの目を惹く美貌まで持っている。  例え過保護と言われようが、典夫はいつだって知矢を独占していたい。それが自分のエゴであっても。そこだけは譲れない。  あいつを傷つけたり、手を出そうとしたりする存在はなにがあっても全力で排除してみせる。  最寄りの駅からマンションまで全速力で走って帰る。  部屋の前でインターホンを鳴らしても沈黙しか帰ってこない。いつもはそれこそ子猫のように走って来て迎えてくれるというのに。  しかたなく自分で鍵を開け中へ入ると真っ暗だった。 「……知矢?」  手探りで廊下の電気をつけると玄関に知矢の靴がある。    ……いるんじゃないか。  典夫は部屋に上がるとリビングへ向かう。  そこには廊下からの明かりで浮かび上がる弟の姿があった。 「知矢? いったいどうしたんだ?」  リビングの明かりをつけると知矢が眩しそうに顔を顰めた。 「電話も繋がらないし、心配したんだぞ」  少し怒気を孕ませて言うと、知矢の肩が怯えたようにビクンと跳ねる。 「ごめんなさい……」 「なにか、あったのか?」  知矢はずいぶん疲れたような表情をしており、典夫はにわかに心配が増してくる。  腰をかがめて同じ目線になり、弟の肩を包み込むようにやさしく抱くと、唇を噛みしめてうつむいてしまう。 「知矢?」 「……から……の?」  知矢が消え入りそうな声でなにかを言ったが、聞き取れない。 「え?」 「……僕、ここから出て行った方がいいの?」

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