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いつもの三人
「なあなあ……最近お前ら距離感おかしくね?」
学食でいつもの面子で食事中、どうにも黙っていられずに輝樹 が口を開いた。
「そう? こんなもんじゃね?」
「………… 」
黙々と和定食を口に運んでいる晶 の隣で肩が触れ合うほどにくっつき座っているのは、この三人の中でもリーダー的存在の郁人 。郁人はとっくに自分のパスタを平らげ、ただにこにこと微笑みながら晶が食事をしているのを眺めている。
「いや! 邪魔だろ? 晶も何か言ったら? あ! 嫌がらせ? もしかして弱みでも握られたとか? 郁人! いくら晶が怒らねえからってあんまいじめんなよ」
「は? なんだそれ…… 別にいじめてなんかいねえし、どこをどう見たらそう思うんだよ、バカじゃね?」
輝樹は郁人の態度が気になってしょうがなかった。今まで常に三人で行動をしていたけど、こんなに郁人が晶にくっついてるのは見たことがなかった。どちらかといえば自分と二人でバカやっている方が多いくらいだったのに、ここ最近では晶にばっかり構っていて自分が除け者になっている気さえしてきて面白くない。晶はというと、様子のおかしい郁人と違って普段通り。輝樹の目にはいつものクールな晶だった。
「おかしいじゃんか……なんなの? ……あっ! ミキちゃん! 久しぶりー、待って待って! ねえねえ今度さ……」
輝樹は郁人に文句を言いながら、通りがかった見知った女の子に声をかけながら行ってしまった。
「忙しねえ奴……でも晶、俺変じゃねえよな? いつも通りだよな?」
「………… 」
先程から黙ったまま食事をしていた晶が、フッと隣の郁人を見る。普段から物静かなタイプの晶が常に騒がしく目立っている郁人や輝樹と一緒にいるのも不思議なこと。それでも常にイベント事などの楽しい事の中心にいれば郁人たち同様周りからの人気もあった。
現に今も結構な頻度で入れ替わり立ち替わり男女問わずに話しかけてくる。次のイベントはいつなのか? とか、合コンしようぜ、とか。社交的な郁人はその度に笑顔で受け答えをし、女の子にはチャラいくらいにおべっかを使って気分良くさせてやっていた。
「……あからさますぎ」
「え? ……何? なんか言った?」
今度買い物に付き合って、と言う女の子に笑顔で「気が向いたらなー」なんて答えていた郁人に向かって、晶がボソッとそう言った。
「輝樹が気にしてる……」
「ああ、なんかそうみたいだな」
先程の輝樹の態度にまるで他人事のようにそう言って笑う郁人に、晶は少しイラっとした。
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