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そんな君も好き~悠の場合~

 検査の結果は特に異常はなく昨日告げられた予定時刻に退院の手続きを済ませ病院を出ようとした時、俺に駆け寄ってくる陸の姿が見えた。 「はるちゃん、迎えにきたよ!寂しかったかな?」  昨日と打って変わって泣いていた陸はどこにも居なくにこにこと笑い覗きこんできた顔に安心と共に愛しく思い、いますぐにでも抱きしめたいという感情が起きたが場所が場所なので堪えるように頭を撫でた。 「・・・まあな」  えへへと嬉しそうに笑う姿がまた俺の心を擽る。その気持ちを一旦落ち着かせて何で来たか尋ねた。この病院は駅から歩いても三十分かかるところにあるが陸は秋広さんに送ってもらいここまで来たらしい。  手を掴んで行こうとこちらの都合も聞こうとしない陸に呆れそうになるがそれが陸らしいと思い引っ張られながらも着いていくことにした。 「どこにむかうんだ?」 「うーん・・・デートしてはるちゃんの家に行くかな?」  この子は直感的に動くのを忘れていて苦笑いを浮かべた。  その後俺たちはスイーツ巡りをして最後にバスケをして最初に出会った頃したことと同じだった。あの頃が懐かしいと運動して疲れた身体をコートに背をつけて思い出にふけっていると帰ろうといい覗き込むように愛しい顔が視界に入り手を伸ばし顔に触れた。 「ああ、帰ろう」  少し照れたような表情をするも元気に頷いて手を引いて立たせてもらい二人で帰路についた 「オレンジジュースでいいか?」 「いいよ~」  家に着くなり陸はベッドに寝っ転がっていて、それを見てまあいいかと思ってキッチンでジュースを入れてテーブルまで持っていき座ると背中に重みがかかりそれが陸のなのがわかるがいつものことなので気にせずコーヒーを啜った。 「はるちゃんにプレゼントがあるの~」  そういって鞄から袋を取り出してはいと渡されたがよくわからず受け取った。中をかけてみると紺のストライプ柄とグレーの小さい柄のついたネクタイだった。 「ありがとう。どうしたんだ、このネクタイ」 「やっぱり忘れてたんだね。今日ははるちゃんの誕生日だよ!印つけたでしょ?」  最近試験や就職活動にと忙しくして忘れていたが、壁にかけているカレンダーを確認すると陸がつけていた今日の日付に誕生日と書かれていた。 「それでね、何プレゼントしようかギリギリまで考えてネクタイにしようって思いついて昨日かなちゃんに付き合ってもらったんだ。ドタキャンしてごめんね!」  通りで昨日高瀬が言った言葉が理解ができそしてほっとして陸を抱きしめいつもは中々口に出して言わない好きだと陸に向かって囁いた。 「僕も好きだよ。だから昨日は怖かった、事故ったって聞いて怖くて色々考えてしまったけどあの時の言葉で安心した。愛してる人が居なくなるなんてもう嫌だよ」  陸も俺を抱きしめていた腕に力が入っていて感じた。ここまで愛されて心配してくれて手放すことはもうできない。陸の顔を向かせてみると泣きそうな顔をしていて安心させようと陸の唇に口づけた。 「そんな顔するな」 大丈夫だ、愛しいお前をおいて居なくなるなんてあるわけないだろう? なぜなら、俺はお前のことを。   『愛してるからな』   そんな君も好き~悠の場合~ end

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