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そんな君も好き~悠の場合~
『うわああん』
『陸、どうした?』
『はる、ちゃん。拓兄ちゃんが、起きないの』
『めそめそしたら起きたいもんも起きれないだろ。大丈夫だ、泣くな。笑って待ってろ』
「・・・るちゃ・・!はるちゃん!」
夢から引き戻されるように視界が明りを灯すと身体に重みがやってきた。
「陸か」
抱き着いてきた肩が揺れている当たり泣いているのが見て取れた。
「笠松先輩、良かった起きて・・・」
起き上がって周りをみると秋広さん、仲山、陸と高瀬がいた。なんでだ、あの時なにがあったかよくわからない。仲山が椅子に座ろうと言って後をついて歩いた時に後ろから衝撃が来てそこから意識がない。
「後ろから子供たちの自転車集団がよそ見してて笠松先輩に勢いよくぶつかって頭打って気絶したんです。救急車呼んだんですけど心配で秋広さんとりっくんを呼んだんです」
「そうか、すまない」
ずっと抱き着いて泣いてる陸をみて心配かけたと頭を撫でるとより力が入った。
「陸、悠くんまだ意識戻ったばっかりだから一度離してあげな。看護師さん呼んでくるから」
秋広さんによって引き離された陸をみるとまだ目に涙が流れていた。昔と変わらないなと涙を指で拭った。
「そういう陸も好きだが泣いていたらダメだろう?俺は大丈夫だ、笑えって言っただろう」
びっくりした顔をしたが泣き止んでいた陸がまた泣き始めて名前を何度も呼びながら抱きついてきて崩れるようにベッドに背中をつけた。
それを見ていた高瀬と仲山は笑っていて、あとから看護師を連れてきた秋広さんもにこやかに笑っていた。
その後看護師からは念のため検査で一日入院と告げられ、後から事故を起こしたという小学生とその親が面会にきて謝罪してきたが自分の不注意なのもあると和解した。陸はまだ居たいと言っていたが秋広さんに引きずられるように帰っていき、帰り際に高瀬が戻ってきて言った。
「勘違いされても嫌なんで言いますが、今日りっくんと一緒にいたのはあなたのためなんで。癪ですけど」
俺の為?何を言ってるのかよく分からず考えていると、呆れるように本当に鈍い人と言って去っていった。
みんな居なくなり、一人の空間も慣れたと思っていたがあの後だからか心細く感じた。陸にメッセージ送ろうにも普段あまり持ち歩かなく携帯は家おいてきている為できない。
あんなに泣いてくれる陸を思い出して心細く感じた心が温かく包まれる。俺には陸と違い家族が失う辛さも悲しみもわからない。けど昔よく俺と拓の後を追ってきてはよく泣いて楽しそうに笑う陸を思い出しそれをあの家族は守ってくれていたんだ。
愛し愛されて色んな表情する陸、幸せもんだ。そんなお前を俺もー。
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