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6時間目

「僕、先生にだけ、見せたいものがあるんだ」  そう言って、僕は放課後、金城先生を連れて、駅に行き、電車に乗った。  電車に乗っている間に、外は暗くなった。  金城先生は、いつも通り、優しい声で僕に訊く。 「どこまで行くんだい?」 「特別な場所」 「特別な場所……?」 「だから、目を閉じていて」  僕がそう言うと、先生は目を閉じる。  その上に、僕はネクタイで先生の目に光が入らないように、先生の目を隠した。  隣町の駅に降りて、僕は先生の手を引きながら、人気のない場所に行った。  道中、先生は僕に質問してきた。  でも、僕は答えるつもりは特にないから、答えなかった。 ☒  僕しか知らない古い倉庫。  誰も来ない。  ここで、僕と先生だけの暮らしが始まるんだ、と思うと。  途轍もなく、ドキドキした。  目隠しをしたままの先生を、鉄パイプで殴って気絶させる。  気絶したのを確認したら、先生が逃げないように、しっかり鎖で繋ぐ。  夢に見た、あの感じに。  それが終わったら、目隠しを外して、先生を起こす。 「おはよう、金城先生」 「す……ずや、くん……?」  先生は、怯えた顔で、僕を見る。 「一体……?」 「僕、先生と初めて会ったときから、好きなんだ。とても好きなんだよ。だから、僕だけのものになってほしいな、て」  でも、気づいた。  そうかな、と思ってはいたけど。 「先生は、初めて会ったときから、僕のものだった」 「一体何を言っているんだ……」 「先生は解ってない。僕のものだ、てことを」  だから、と僕は鉄パイプを振り翳す。 「僕が、これから解らせてあげるんだ」 「っ」 「怯えないで、先生。でも、僕から目をそらさないで」  僕が先生を手に入れるには、こうするしかなくて。  これが、全てなんだ。  これでも、先生が僕以外の人を見るなら。  僕は、先生を壊すしかないんだ。 「ミドリ先生、僕とずぅぅぅっと愛し合おうね」  首を横に振ろうとした先生を、僕は笑って鉄パイプで殴った。

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