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5時間目
「そうだったの……。気づけなくて、ごめんなさい。音羽」
母さんに、学校でのことを話すと、母さんはそう謝った。
僕の隣で、一緒にご飯を食べる。
それは、いつ振りだろう。
「良いんだ、僕が暗いから……」
僕がそう言うと、母さんは申し訳なさそうに言う。
「母さんが、父さんのことばかりだったからよね……。ごめんなさい。母さん、今月で父さんが作った借金返済できるから」
「……そうしたら、パート減らしてくれる?」
「うん。一日は必ず休むわ。その一日は、あなたとの日にする」
「本当?」
「本当」
ね? と、母さんは笑う。
母さんの笑顔は、とても久しぶりに見た。
僕は嬉しくて、大きく頷いた。
☒
「――ということがあったんだ」
翌日、いつものように保健室に行った。
今日は、金城先生しかいなかった。
昨日のことを聞いてみようかな、と思ったけど。
何だか聞いてはいけないような気がして。
僕は、何も聞かず、母さんとのことを話した。
金城先生は、ホッとしたような顔をして「それは良かった」と笑った。
僕も良かったと思う。
でも、何だろう。
何で、こんなにも嫌な気持ちになっているのだろう。
「……先生、あの」
僕が話そうとすると、先生は「あのさ」と僕に言う。
「昨日、来なかったけど……。何かあったのかい?」
「あ、昨日は、あの、トイレに行って、で、出たら、佐々塚先生に逢って……。それで、その、先生のおかげで、少しだけ授業を受けることができた……んだ……。へへ」
僕は昨日のことを話す。
佐々塚先生が、いつでも相談して、と言ってくれたこと。
佐々塚先生がいる間は、何もされないこと。
話し終えると、金城先生は「そうか……!」と言って、嬉しそうに僕に言う。
「そうか!! それは本当に良かったよ!! 安心した」
「……え?」
「ほら、それってつまり、教室に行ける、てことに繋がるだろ? 良かったよ。教室が居場所になって」
「…………っ」
僕は、金城先生をベッドの上に押し倒す。
「迷惑だったんだ……! 僕のこと! 僕が! もう、ここには来ないと思って、安心したんだ!!」
「ち、違う。違うよ、鈴谷くん!」
「違う? そんなことない! 先生は、僕のことなんか――!!」
好きではなかった。
なら、どうして優しくしたの?
僕がいなくなることは寂しくないの?
先生。
「先生、昨日、誰とえっちしていたの……?」
「え……?」
「音、聞こえた。誰としてたの……?」
「…………」
「先生」
僕は、金城先生の首に手をかける。
「あなたは、もう、僕のもの」
だから、僕は――
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