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「さっき見せた動画、ここで撮ったんだ」 「ここ? ……なんにもないけど」  安藤が不思議そうに目の前の空き地を眺める。そこは雑草があちこちに生えている寂しい場所で、槊葉は突っ立ったまま夏菜のいない景色を撮り続けていた。もうこれで終わりなんだと自分に言い聞かせながら。 「あったんだよ、ここに。DROPSと、俺の初恋と、安藤のビー玉が」  ふいに胸の奥に押し込んだ感情がせり上がり、目尻から熱いしずくがこぼれ落ちた。 「俺、夏菜ちゃんのこと好きな自分しか知らないから、それがなくなったらどうなるんだろ……もしかしたら失恋よりそれが怖いのかな。かっこわり」 「そんなことない」  安藤が静かに言って背中に腕を回した。未来では槊葉より背が高いくせに、今寄り添う体は少し小さいくらいだ。 また学ランの袖で涙を拭いながら気遣うように言葉を続ける。 「あの動画きれいだった。でもこのビー玉で撮影してる時も、目をキラキラさせてアイディアを出しながら撮ってて、すごく輝いてたよ。そこに水上さんはいなかった」  少年の不安定なテノールが至近距離で甘く響き、槊葉はドキリとした。いかにも安藤が言いそうなキザったらしいセリフなのに、嫌な気がしないのはなぜだろう。

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