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「君が撮る世界を見てると、この街もビー玉も全然違うものみたいに見えてわくわくしたよ。少なくとも俺にとってはかっこよかったし、負けてられないって思った」  まさかそんなことを思いながら付き合ってくれていたなんて想像もしていなかった。嫌な気がしないどころか槊葉が欲しがっていた言葉をくれた気さえする。 「……はは、夢でも嬉しいや。あんまちゃんと考えたことなかったけど、夏菜ちゃんがいなくても、俺映像作んの好きみたい」  照れくささと戦いながらつぶやくと安藤が首を傾げる。 「さっきから夢夢って、何? 動画の設定?」  心底不思議そうな目をしておかしなことを聴いてくる安藤が面白い。夢の世界の住人は自分が夢の一部だなんて考えもしないのだろう。 「違うよ。これは俺が見てる夢。失恋したショックで気を失って十七年前に飛んできたの。まさか高校生の大輔に会うとは思ってなかったけど」 「え、何それ……」  混乱する安藤に構わず、槊葉は録画停止ボタンを押した。 「もういい加減目が覚める頃だと思う。……俺も、夢だから言うけど」  槊葉は口から心臓が飛び出しそうなほどドキドキする胸を押さえ、最後くらいは素直になろうと勇気を振り絞った。 「今日大輔に会えてよかった! おまえのおかげで夏菜ちゃんのこと吹っ切れそうだし、戻ったらちゃんと動画編集やってみようと思う。本当はおまえと撮った映像を完成させたかったけど……」  それは無理だ。映像どころか今日の出来事さえきれいさっぱり忘れてしまうだろう。夢の記憶なんて持続しないのだから。

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