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第1話

つい最近まで色付いていた葉は枯れ、段々と風も冷たくなってきた頃。 久々に晴れ間が差して、少しだけ気分が上がる。 「出席確認をします」 いつも通り、朝の出席確認。 俺は、県内じゃそこそこ有名な進学高で、教師として働いている。 そこで担当するのは、学年に唯一1クラスだけバカが集まる……いや、少々問題のある生徒が集められるクラスだ。 生徒と仲良くするわけでも、教師同士馴れ合うわけでもなく、当たり障りのない平凡な毎日を過ごす。 これが1番だと、教師を始めて数年で理解した。 「青木さん、石川さん、岩田さん、上野さん…」 うるさく騒ぐ教室で、淡々とただ、名前を呼ぶだけの時間。 これが終われば、次の授業の準備をするために職員室へ戻り、授業が始まる少し前に教室へ向かうだけ。 生徒のから質問も、なかなか受けることはない。 きっと、話しかけにくい……というより、話しかけられないようにしている。わざと。 教師としてダメなことは、十分に理解している。 「ねぇー、ねぇってば!」 教室を出ようとする俺の服を、誰かが掴んだ。 “誰か”なんて言い方をする理由は、沢山ある。 1つあげるとすれば、俺にとって、厄介な生徒だからだ。 「直ちゃんさー、なんでそんな仏頂面なの?」 「……」 「えー?そんなこと言わないでさ、ニコッてしてみてよーほら!」 本当に本当に、くだらないことで呼び止めたこの生徒は、この問題児クラスの中心にいる。 金髪でだらしなく制服を着て、どこにでもいる悪ぶった生徒だ。 ただ、キレイな顔立ちをしてるからか、校舎裏や空き教室に女子生徒といるところを度々見かける。 そして、やっかいなのは、最近になって俺にやたらと絡んでくる回数が増えたこと。 笑い者にするわけでもなく、ただの興味本意で絡んでくるのだが、それがものすごく迷惑だ。 俺は、生徒と馴れ親しむことはしたくない。 だから、ここまでの鉄壁をつくっているというのに。

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