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第2話

「お先に失礼します」 「「お疲れ様ですー」」 毎日毎日、同じことの繰り返し。 仕事が終われば駐車場に停めていた車に乗り込み、きっちり上げていた前髪をぐしゃぐしゃにして下ろす。 「はぁ……」 音が欲しくなるほどでもない家までの距離も、なんとなくラジオをつける。 今日は面倒だから、コンビニで済ませてしまおう……そう思いながら、近所のコンビニへ向かった。 「12番を1箱」 「410円になりまーす」 特になんでもない日だが、たまに吸いたくなる。 明日は休日だからと、酒も一緒に買ってしまった。 コンビニを出て、外にある灰皿横で煙草に火をつける。 スーツのジャケットを車に置いてしまい、夜は身震いしそうなほどの寒さだ。 それでも気持ちが落ち着く一服に、腕をさすりながら煙を肺に入れた。 「ゃっ…だめっやだぁ……」 はぁ、こんなところでお盛んか。 遠くから聞こえてくるいかがわしい声に、せっかくの煙草も不味くなる。 灰皿に煙草を押し付けて、車のドアに手をかけた。 「黙れ!殴られたいのか!?」 「や、やだ……」 声を荒げる男と必死に抵抗している声。 まさか…… そう思えば、体は勝手に動いていた。

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