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第3話躊躇いがちのポジションチェンジ

「……ごめん、修吾……」  丹念に愛撫して高まり合って、繋がろうと試みたけれど――隆幸さんが低いため息交じりで俺に告げた。  見上げれば今にも泣きだしそうに眉を寄せ、心から悔しがっているのが伝わってきた。  このままだと捨てられるんじゃないかと怯える犬に姿が重なり、俺も思わず顔をしかめてしまう。そしてすぐに体を起こして隆幸さんを抱き締めた。 「気にすんなって。俺は隆幸さんと一緒にいられるだけで幸せだし……」  俺よりも少し背が高く、筋肉ががっしりとしている体。抱かれていると、すごく頼もしさに溢れているように見えた。でも今は同じ体なのにどこかか弱く、胸が痛んでしまう。でも可愛いとも思ってしまい、胸が愛おしさで熱くなる。  どんな隆幸さんでも好きなんだな、と改めて自分の気持ちを再確認していると、 「……なあ修吾、ひとつ提案があるんだが……」 「提案?」  俺が聞き返すと隆幸さんが言葉に詰まる。  しばらく小さく唸ってから、意を決したように力みながら口を開いた。 「ポジション、逆にしてみないか?」  ポジション逆? ……ってつまり、俺が隆幸さんを抱くってことか?!  まったく想定していなかったことを言われて俺が目を丸くしていると、隆幸さんは俺の腕の中で俯いたまま、ぽつり、ぽつりと気持ちを伝えてくる。 「俺さ……忙し過ぎて疲れてたっていうのもあるんだけど、お前に応えられないのが辛くて、せめてお前を受け入れることができればって考えて……でも踏ん切りつかなくて、ずっと悩んでたんだ。お前は付き合う前から俺を受け入れようってしてくれてたのに、付き合って三年も経つのに受け入れるのに抵抗があるってどうなんだって……」  もしかして、最近のEDの原因ってそれ?  真面目に考えてくれていたことを嬉しく感じながら、俺は息をついてから隆幸さんの背中をポンポンと叩く。 「たまたま俺がケツに何か挿れるのに抵抗が少なかったってだけで、大半のヤツは簡単に割り切れないもんだから。だからそんなに自分を責めないで欲しいし、俺と比べて落ち込まないで欲しいんだけど」  ぶっちゃけ俺だって隆幸さんのを受け入れる側に回ろうって決意するのに悩みまくったし、とにかく絶対に隆幸さんが欲しかったから、手段を選ばなかったんだけれど……それを言うと余計に考え込んでしまいそうだから、俺がそういうことに抵抗が軽かったことにしてしまう。  訝しそうな気配を漂わせていたが、隆幸さんはどこか観念したように俺の胸へ頭を預けてきた。 「……修吾はどうなんだ? やっぱりこんな三十のごっついオッサン、抱こうなんて気にならないか――」 「コラ、勝手に決め付けるな! 今まで受けるほうで不満がなかったから、ポジション変わろうなんて考えたことなかったんだよ……いけるかどうかは……やってみないと分からないし」  言いながら動悸で目の前がチカチカしてくる。  俺が隆幸さんを抱く? やり方は、まあ、今までそっち側だったから分かるけど……。  ごくり、と。思わず生唾を呑み込んでしまう。  ぎこちなく隆幸さんの頬に手を当てて顔を上げさせると、俺は緊張で硬く結ばれている唇をゆっくりと奪った。
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