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第6話

 画面を閉じて顔を上げると、台所の入り口に翔が立っていた。 「今の……」 「あぁ、主犯の父親だ。本人に謝罪に行かせると言ったが、断っておいた。それでいいか?」  問うと、翔は安心した顔になった。力が抜けたのか、壁に手をつく。 「病院に行ったほうがいいみたいだ。動けるか?」  うん、と翔がうなずく。  顔の輪郭が、日の光の中で柔らかい線を見せている。 「辛いだろうが……力になる」  そう京也が言ったとき、不意に翔が顔を上げた。優しげな顔なのに、その中に凛とした意志が確かに息づいている。 「ありがとう」  その言葉を翔の唇が紡いだとき、京也は耐えられなくなった。  愛おしい。  数歩で翔を腕に抱く。首筋に顔を埋め、鼻一杯に匂いを吸い込む。 「……どう思う?」  問いかけはか細く、しかし翔は確実に受け止めた。 「うん。京也さん。きっと……あなたは僕のものになる」  静かな確信に満ちた声。  京也が翔の顔を覗くと、いたずらっぽい光が翔の目に浮かんだ。 「それにしても、ひどい出会い。しかも会ってからまだ1日経ってない」  ふふ、と京也も笑う。 「俺がお前のものに? お前が俺のものになるんじゃないのか?」  じっと見つめ合い、同時に噴き出す。  アルファとオメガ、こんなことってあるんだな。  たった1日。でも(つがい)を見つけるには充分なのだ。  あの矢島親子が何か言ってきたら、したたかに脅してやろう。  京也は晴れやかな気分でそう思った。まだお互い素性もわからないというのに、不思議なほど強い感情が、翔の匂いとともに体を満たす。  京也のぬくもりを感じたのか、腕の中で翔がほっと息を吐いた。互いの本能に、これほど感謝した日はない。  ひどく自然に唇を合わせ、やがて深く貪り始めた2人を、優しい光が包んでいた。

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