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意識とシリアスがない空間

   頭痛ぇな……。  ふと目が覚める。  最近は新垣に任せっぱなしでなにもしていないせいか、俺の送る生活リズムが正しいようで正しくなものになってる気がする。  今日だって気が付いたら寝てたっていう始まりだ。……始まり? 「んぅ、はあ……んッ」 「……」  外はまだまだ暗い。  それどころか俺の真後ろで、密着されてる体で、ナニかを擦られてるな……。俺、嫌だって言ったはずなんだけど? 「おい、新垣……おい」 「あッ、こた……はあ、んん」  ちゃっかり感じてんじゃねぇよ。  寝る前まで俺に触れていた手はもう震えていなくて、感じもしない胸を触られている。……くすぐりだけが残っているが、モノを触られるよりもマシだ。  首元に顔を埋められて、そこで息を大きく吸われては勝手に堪能している新垣。というかケツに当たるこれは新垣のモノか?  めちゃくちゃデカくなってるじゃねぇか……なにもかもを除いて、親友の新垣を見てきたつもりだが、やっぱりわからねぇな。  お前さっきまで、この数時間前まで泣きそうだっただろ? 「こた、こーた、ちょっとイカせてくれ……ふっ、ん」 「うわ……てめぇ、俺が嫌だと言ったところで止めないだろうが」 「ん、うん……こたぁ……はあ、んンっ、ちゅっ」  一気に押しつけてきた新垣のモノは狙ったかのように俺の足の間に挟んできた。それでいて前に回ってきた手は自分のモノと俺が穿いてたジーンズの余り布で擦っては続けている。  絶対に痛いやつだ。  耳たぶを噛むようにキスしてきたことに少し反応する俺も俺で、たぶんこの生活から麻痺してきているんだ、と言い訳。決して俺の性欲が爆発してきたとかじゃない。  断じて違う、と。 「ん、新垣、おまっ、この右手はいいだろ」  左手で新垣は自分のモノを。  右手で俺のない胸を触りつまんでは指先で突いてくる微妙な刺激になんだか耐えられなくなってくる。  けど、俺まで本当に爆発したら、どうなると思う?  ――最後までする形になるだろうが。 「はッはっ、こーた、好き、好きだっ」 「わかったから、俺の話も聞け、アホッ」 「好き、愛してるっ、んぁッ嫌わないで、ほしい……っ」  わざとなのかなんなのか、耳元で囁くように好きだの愛してるだの言われたらどうなるかって……言われ慣れてない俺からすると、簡単に顔や体が熱くなるから。  明け方なのか、それともまだそんな時間でもないのか。  とにかく部屋が暗くてよかったと思える。 「にーがき、イクならさっさと……!」 「んーん、こたぁ」  甘ったるい声で俺を呼ぶな。  無理な事なんだろうけど。 「んっ……ん、ぅんッこーた……」 「チッ、ほんとマジでさ、」  抱き締められる腕に苦しくなりながらも、その気持ちだけはわからなくもない興奮にただただ我慢。服越しとはいえ当たるものは当たるからなぁ。  てか、俺はあれ以来、寝落ちしたままということになると……あー、まだ風呂に入ってないことになるぞ。新垣のコトが終わったら風呂に行こう、そうしよう。  そんな別の考えをしていた俺でも、新垣は違う。 「はあ、はあっん、はッ航大、ぁ」  どんだけ俺が好きなんだ、コイツ。  埋められてる顔はたまに浮かせて舐められ、痛みもわかっていない新垣から噛まれたり、吸われてるような感じに自然と体が捩る。  完全にヤられてるくせに曖昧な言い方で抵抗をするのは、俺も意識が朦朧としてきてるからだろう。  寝起きにこんな遭遇ってツラいもんでもあるし。  あれ、ていうか……。 「手錠……」 「こうた……ん、」  いつの間にかイッてたらしい新垣はベトつく左手で俺の手を握りながらコメカミにキスをしてきた。  しかしここで、俺は気付いた事がある。それはいつもハメられてたはずの手錠が、されてなかったという事だ。 「こた、こーた……」 「……」  抱き枕みたいに横向きになっていた俺は新垣に肩を掴まれて仰向け状態になる。その上に躊躇いなく、出していたモノなんてしまわず、そのまま乗られてはハメられてない自由な両手を新垣の手で繋がれた。  指を絡ませるの好きだなぁ、こいつ……左の手は完全にアウトだけど。  速攻で手を洗いに行きたいんだけど。 「こた……航大は俺のでいいだろ?」 「は?」 「いいから、嘘でもいいから頷いて」  遮光カーテンを完全に閉めていれば昼間でも真っ暗。  時間がわからない今、輝きに輝きまくるこの部屋の電気――シャンデリア――がついていない暗いこの場で、だけど目は慣れてきたのか近くにある新垣の顔がはっきりと俺の目にうつっている。 「……なんでまた泣きそうな面してんだよ」 「……こた、」  頷きもしない俺を見て、握られる手の力が強くなる。埋められるそこはいつもと同じで変わらず首元。  そこに口付けをしてくるから迷惑なんだけど。  ――買い物からのおもくっそ悪い空気は、実は変わってなかったらしい。 「重いぞ、新垣」  せっかく自由の手が入ったというのに新垣に掴まれちゃなにも変わらねぇな。買い物の後の失態を思い出すが、あの時の俺は頭がおかしかったんだ……。  そうやって片付けていかないとどこの収集もつかなくなるだろ。  染みついてない。手錠とタオルに縛られる生活が、俺の体になんて染みついていないから。絶対に!  両手が動かせないのを理由にしょうがなく俺は頬を新垣の頭にすり寄せながら話しかける。 「なんだお前。木下さんや王司さんに会ってからずっとそのテンションだな」  勝手な決めつけで勝手な予想。  中学の時になにかあったから、こんな新垣なのか?って。……いつもと変わらずの変態は居座ってるわけだけど。 「ん……」 「うおっ」  抵抗が出来ないから頬擦りをしただけなのに新垣はそれを勘違いして強めの頬擦りを押し返してきた。  絡まれてた手は、にぎにぎ、なんて効果音が付きそうな握り方で変態過ぎると思ったほど。  こいつだけだぞ、こんなの俺にやるのは。 「別に、語りたくないならどうでもいいが、いつまでもそのテンションでいられると俺が困るぞ。誰が俺を閉じ込めてんだよ」 「……ん」 「……おい、話聞いてんのか変態」  返事があまりにも適当過ぎてイラつく。思わず足で蹴飛ばそうかと思ったが、我慢だ。  今の新垣はツラいのかもしれないから。俺はきっと優しいから、こうやって待ってあげてんだと思うぜ?  ここまでの相手を、ここまでされた相手に、親友という枠内で、突き放さずに済んでるわけだから。  俺のこの考えも大概にした方がいいんだろうけど。 「……痛み、あったら実感出来っかな」 「殴られたいなら殴ってやるけど」 「でも手ぇ離したくねぇしさー?」  そう言って指に口付けたけど――なかなか俺の意識がある時にこいつは唇にキスしてこねぇな。  別にいいんだけどさ。変態行為の流れ的に考えて今のは指じゃなく、唇だと……。  チラリと【02:19】というデジタル時計の数字を見ながら思ったこと。  

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