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【少々番外編】新垣航大でドラマ鑑賞
両親が結婚記念日の旅行から帰ってきて数日後のある日。家のリビングでスペシャルドラマが放送されていた。それは連ドラが始まる前の、序章に過ぎない二時間ドラマだ。
出演者を含めて好みに近かったそれを絶対に見たいと思っていた俺だったが、バカなことに途中で寝ていたらしく、次に目が覚めたのは朝だった。
「それなら録画したぞ」
「……」
やるな、親友新垣め。
たぶん新垣は俺を知り尽くしているだろう。テレビの好みもわかっていると思う。それはバラエティーからドラマから情報番組から。気持ち悪いほどに知っているんだ。
プラス、俺の部屋にはまだ隠しカメラと盗聴器が存在している。寝ている俺を見て、そのドラマを録画したんだと思うんだけど。
「家にあるから来るか?」
「……」
そんな爽やかな口調の裏には、なにが宿っているのか知らないが見たいものは見たい。
新垣との関係なんて口にしたらごもるような関係だが、これはあのくそでかい家に行って、くそでかいテレビでみたいドラマ。
きっとスピーカーも重低音をきかせながらリアルな視聴が体験出来る。
* * *
最初はリビングのソファーで二人、隣同士で見ていた。
言わなくてもわかるようにここのリビングも俺の家の何倍もでかいから困る。
だけどそれに見合ったサイズのテレビに遠いとも感じず、むしろ見やすい距離であった。が、それも最初だけだ。
刑事もののドラマ内容に銃や爆発などやりたい放題な犯人で追いかける捜査一課達。盛り上がりなんて最初から最後まである。だから気付かなかった。
新垣がいつの間にか、ソファーに座る俺の足の間に、いたことを。
CMまで食い入ってた俺はそこでやっと違和感を知って気付いたほど。
けどまあ、なにも言わなかったよ。だって別に邪魔されるようなことはないし、他も変態的なものをされてる様子もない。ただ俺の両足を腕でロックするかのように膝裏から通してただけで。
新垣が俺の太ももに頬擦りしてる程度で気にすることもなく、ドラマが再開したから見ていた。
ちょうどいい位置にあった新垣の頭を利用して頬杖をつきながら、たまに手遊びで髪の毛を弄って見ていたドラマもエンドロールが流れる。
犯人はまさかの身内にいた展開でもう絶叫マシンに乗ったかのようなハイスピードで進んでいたなぁ。連ドラは確実に見よう。新垣もきっと毎週録画するだろうよ。てか、しろ。
「面白かったなぁ」
それと同じ体勢で見続けていたせいか少し疲れて欠伸が出る。眠い。
「こた、眠いの?寝てもいいぞ」
あまり信用出来ない新垣の前で寝るのは遠慮したいものだ。
しかし、いつまでもそう言ってちゃキリがないことを俺は知ってる。
だから言いづらい関係が続いてるんだろうな。
「こた……出来ればこのまま寝ててほしいな」
「なんでだよ」
「俺もずっと、このままがいいから」
流し目で見てくるこいつからはやけに色気を感じる。イケメン強ぇよ。
足を動かせないように腕通しで組んでた手も離れて、新垣はさらに俺の左太ももへ頭を寄せてきた。……別に、なにもない。
ちょっとの好奇心で新垣の前髪をはらってやったあと、首筋を撫でてやれば小さく体を震わせていた。
なんだ、今の。
「びっくりさせないでほしいな……こたからなんて、珍しい」
「……そういうつもりは、なかったけど」
調子に乗る新垣は首筋を撫でていた俺の手を取り、ちゅっと音立てて口付け。
「それに航大がここにいるのは久々だし、もっとゆっくりすればいい」
「久々でもないけどな」
「俺からしたら一日でも長いんだよ」
どうだろうか、この行動は。
こいつは俺が好きらしいから。純粋な面を覗けば、確かに好意は伝わる。行き過ぎたところも、気持ち悪がりながら俺は理解している。
好きな奴とくっついていたい気持ち。
今の新垣はたぶん、そういった気持ちでこのまま寝ててほしいと言ったんだと思う。
あー、もうすげぇ眠いし。今日の新垣なら別にいいのかもしれない。
そう思いながら俺は最後に新垣の口のナカに入ってる指を動かして、舌を引っ張りながら意識を遠ざけた。
なんだか最後に、好きだ、と聞こえた気がするけど、
「やっと睡眠薬効いたか。かわいいなあ、なにシよう」
――相変わらずブレない野郎だなぁ、って。
【新垣航大でドラマ鑑賞*END】
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