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第3話

実家から志望校までは、電車で片道3時間。 その為、学校に程近い場所に住んでいるという従兄弟が、結城の両親に同居の話を持ち掛けたのだという。 「……何だそれ。超羨ましい展開じゃん」 「うん……」 「で。その従兄弟、可愛い?」 「………か、可愛いっていうか……美人、かな」 真っ赤になった顔を隠すように、俯いて参考書に視線を落とす。 ……綺麗な鼻筋。白い肌に映える、血色のいい唇。華奢で狭い肩幅。 そして、少し長めの襟足から覗く……白くて細い項。 女……みたいだな。 何故かふと、そんな感覚を抱く。 「……ねぇ、由利は?」 「──!」 突然、結城が下から俺を覗き込む。 長い睫毛。潤んだ大きな瞳。 普段そっけない猫が、突然甘え縋りついてくるような……何ともいえない愛くるしい仕草。 その仕草に、不覚にもドキッとさせられる。 「………別に、大した事ねぇよ」 結城に悟られないよう、直ぐに視線を逸らす。 ──過干渉の母。 俺の留守中、勝手に部屋に忍び込み、至る所をこっそりチェックしている。 母は上手くやってるつもりらしい。が、部屋に入った瞬間の、あの何ともいえない違和感。ゾッとする。 まだ親の管理下にあるとはいえ、心の中まで曝かれている様な感覚がして……気持ち悪い。 別に、あの家を出られる口実ができれば、学校なんて何処でも良かった。 たた、それだけ。 ……結城と一緒で、俺も充分不純だ。 「来年、女子高から共学校に変わるだろ? て事は、女子率高ぇじゃん? ……可愛い女子と選び放題。アパートに連れ込み放題。って訳」 「………なにそれ。由利も、充分動機が不純じゃん」 結城がクスクスと笑う。 その不純な者同士、本命校に見事合格。 実家から新天地へと拠点を移し、お互いに新生活が始まった。

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