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【2】SIDE蓮見(2)-3

 安田という客の仮住まいは、歩いて七、八分ほどのところにある賃貸マンションだと聞いている。  遠いというほどではないが、白い息を吐いて三井と並んで歩いてくる姿を見て、よく客を歩かせたなと感心する。  住宅密集地の現場ではクルマの置き場所も悩みの種で、客を案内する間、作業の道具を積んだバンを遠くに移動させなければならない。それをしなくて済むのは、単純に助かる。 「急にごめんなさいね」  母親のほうが、どこか困ったように言った。 「ちょうど、中学の開校記念日で、娘が家にいたものだから……」 「こんにちは。三井さんも美形だけど、監督さんも超イケメンだね」  娘のほうは無邪気に笑って屈託のない言葉を口にする。 「真由(まゆ)ちゃんたら」  母親が軽く睨んで娘の肘をつついた。  施主が希望すれば、現場はいつでも見られることになっている。少しも気にすることはないのだと、蓮見は丁寧に二人に告げた。工程によっては危険なこともあるので、指示には従ってほしいと付け加える。 「真由ちゃん、迷惑かけちゃだめよ」 「わかってる」  前日の夜に渡した客出し用の概算見積もりを、三井が夫人に手渡した。 「僕が説明するより、実際に現場を見ながら、監督の蓮見から説明を受けたほうが、わかりやすいと思いましたので」  夫人が頷く。 「蓮見、お願いできる?」 「ああ。もちろん」  蓮見は予備のヘルメットを二人にかぶってもらった。二階で大工が作業中だった。  まだ床を張っていないLDKに案内しながら、施工用の図面を広げて見せる。 「ペニンシュラ型に変更したいと伺いました」 「はい……」  もともとの図面には対面型のキッチンが図示されている。  カウンター一体型で広い天板を持つキッチンだ。北を背にして立つ位置に横長に配置する予定だ。背後の壁面には大型のシステム収納が入る。

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