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【2】SIDE蓮見(2)-5
へえ……と二人は揃って曖昧に頷いた。
「ほかに役所関係の手続きもありますし、キッチンの発注をし直す必要もあるので、そっちほうが時間がかかるかもしれませんけど……」
「キッチンを発注し直すんですか? 同じような形のキッチンに見えるけど、今のは使えないの?」
夫人が聞く。
「収納を取れる壁面が北と西の二面しかないので、キッチンの向きを変えるとシンクの位置が逆になってしまうんです。キャビネット部分は同じものが使えますが、天板に空ける穴の位置が違ってきます」
えんぴつ描きのキッチンの絵にシンクとコンロを描き加えて見せた。
「あ……」
「それができてくるのを待つので、どうしてもその分工期が遅れることになります」
「コンロも?」
「コンロはハイカロリーバーナーの位置が逆になりますが、それは標準品の中からすぐに替えがあるので」
夫人が頷く。
「見た目はほとんど同じでも、逆向きだから使えないものがあるのね……」
キッチン本体の価格はそれほど大きく変わらなかった。
サイドにくる収納が多少変わったことによる追加料金と、元の器機のキャンセル料や、配管と土間コンをやり直すための工事費がそこに加わる。
合計すると、追加代金は小さなものではなくなる。
見積書の金額を眺めて、安田夫人が娘の顔を見る。
「どうする?」
娘の真由は難しい顔で唇をきゅっと結んでいた。
「今ごろになって、どうしてもこのペニンシュラ型ですか……? これがいいって言い出したのはこの子で……」
「だって、美咲 ちゃんちのキッチンがペニンシュラ型で、すごくかっこいいんだもん。ママだって、ショールームで見た時に、これがいいって言ってたじゃない」
「そうだけど……。でも、美咲ちゃんちってもっとおうちが広いでしょう? ママだって憧れたけど、三井さんと打ち合わせする中で、いろいろ考えて、やっぱり対面のほうがいいかなって思ったのよ」
「そんなの知らない。あたしがいない時に決めちゃったんだから」
「だって、真由ちゃんいない日のほうが多いんだもの」
少しの間、母と娘のやり取りが続いた。
「それに、キッチンがあんなところまでくるのよ? そしたら、ソファセットは置けなくなるんじゃない?」
「そうなの?」
真由が蓮見と三井の顔を交互に見る。
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