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【8】SIDE蓮見(8)-8 ※R18
愛しい。
感じて、乱れて、達したいのに耐えている。
「三井さん、イきたい?」
がくがくと細い首が頷く。
右手を添えて上下に擦りながら、腰の動きを激しくした。跳ねるように突き上げ、最後の放埓を促す。
「あ、あ、あ……、あ……、ああ……っ」
「三井さん、一緒にイくよ」
強く大きく突き上げながら、右手の動きを速める。
叫ぶような嬌声を上げて三井が吐精する。それに合わせるように、蓮見も二度目を吐き出した。
連日の行為のためか、三井の精液はさらさらと透明に近い。
この人はきっと、こんなに毎日出したことなどないのだろうと思った。
細い項 にキスをする。そのままなんとなく肩を噛んだ。
いっそ、食べてしまいたい。
歯形を一つ残してしまうと、これまで綺麗すぎて汚すのが怖かった肌に、所有の証を刻みたくなる。鎖骨に、胸に、脇腹に、腿の内側に、蓮見崇彦のものだという証を赤く標しるしてゆく。
誰にも渡さない。
「三井さん、好きだよ……」
どうしようもなく好きだ。
なぜこんなに惹かれるのかわからない。優しく穏やかで美しい。それだけではない何かが、蓮見を惹きつける。
魂が呼応したかのように。
翌朝、玄関の小さな三和土 に落ちた袋の中で、氷は水になっていた。
ビニールの端を歯で切って、外の植え込みに咲くパンジーに注ぐ。
若いから、身体が先に溺れる。
そう言われれば、否定する材料はない気がした。けれど、それが全てではないと思った。
身体の快楽だけを求めて抱き合っているわけではない。
好きだから抱きたい。一つになりたい。想いを寄せ合う誰かと抱き合うことは、最上の歓びだ。これほど幸せなことはない。
誰かと抱き合うために人は生まれてくるのだと思った。愛する人の中に入りたくて、足の間に特別なものを持って生まれてくる。
西園寺のことはどうでもいいが、あの男に「どうせ今だけ」だとか「身体だけの関係だろう」と思われるのは気に食わない。
もっと三井のことを知りたい。
どこで生まれ、どんなふうに育ち、何を愛して生きてきたのか。どんな本が好きで、何が好きで食べられないのか、知りたい。
弟がいると言っていた。
まだ、小さい弟だという。それから、鍋が好きだ。土曜日だけでなく、日曜日にも「会いたい」と言ったら、鍋を用意していた。
それから……。
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