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【24】SIDE三井遥(10)-6

 長い腕が、しっかりと遥を胸に抱き寄せた。 「帰ろう、遥」  遥、と名前で呼んで。 「お母さんと話せた?」  蓮見の問いに遥は「うん」と頷いた。  白く霞んでいた雨上がりの霊園に、空から光が差していた。木や草の先で雫がキラキラ輝いた。  遥はあの日、梓に、こんなふうに言ったのだ。まだ、遥の中には諦めに似た気持ちが残っていたけれど、それでも……。  ――お母さん。  ごめんね。  最後の夜、髪の毛を洗いたかったよね。ごめん。  大学も続けられなくて、ごめん。  だけど、僕は、あの場所から逃げないと、まわりじゅうのものを全部壊してしまいそうだったんだ……。ものも、人も、傷つけたくて、苦しくて。  逃げた……。  知らない街で、知らない人に助けられて、今こうしても生きています。今は、働いて、自分の力で生きています。  少しずつお金を貯めて、大学に行く準備もしているよ?   それから……。  好きな人ができました。  とても優しくて、強くて、まっすぐで、眩しいくらいよく笑う人です。  お母さんが、お父さんに、僕を自由にしてほしいと言ってくれたから、その人と出会うことができました。  ずっと、心の中で、僕はお母さんにごめんねばかり言ってきたけど、だけど、今日はお礼を言いたくてここに来ています。  お母さん、あの時僕を守ってくれて、ありがとう。  本当に、ありがとう……。  苦しいこともたくさんあったし、きっとこれからもいろんなことがあると思います。  それでも……。それでもね。  僕は今、とても幸せです。   ー 了 ー 最後までお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

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