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エロピーグ?エピローグ?
エロピーグ・・・・・?
エピローグのことを言ってる?
「ぎゃはははははっ!ありえな~い!」
扉の向こう側から瞬の笑い声が聞こえてきて水島は足を止めた。
「エロピーグだってよ、エロピーグ!」
この声は永久だ。
瞬と同じように、バシバシッと机でも叩きながら大笑いしているようだ。
「エロい話かってぇの!あぁ、腹痛ぇ」
「これってエピローグのことよね?」
この声は愛しい恋人、破滅の魔女と呼ばれた人の孫、真琴。
「英語の綴りが微妙だったのかしら・・・・・・カタカナで・・・・・・エロッ・・・・・・」
そんな真琴も必死で笑いを堪えてるようだ。
声が震えている。
「えろぴーぐぅ!えろって、えろってぇ!」
永久の笑いは止まらないようだ。
そっと扉を押して、ちょっとの隙間から中の様子を伺ってみる。
「ミズッチがぁ、小説書いたから読んでみてって言って見せるからさぁ、とりあえずパラパラ捲っていったら」
瞬は涙を流している。
息も絶え絶え・・・・・・ひーひー言っている。
「これだもん!エロピーグ!衝撃が走ったよ!」
そのページを開いて、永久と真琴に見せながらゲラゲラ笑っている半狼化した瞬。
「エロいことがピークなんだよっ!」
永久はバシバシと机を叩き続ける。
背中にのしっと重みを感じて振り返る。
「あ、大翔くん?」
部屋の中を覗く水島の背中に体重を預けて、大翔が同じように部屋の中を覗いた。
中の騒ぎが気になったのだろうか?
だが、その弾みで扉が開き、部屋の中にいた三人の視線を一斉に集めてしまう。
「あ、ミズッ・・・・・・チ」
水島に続いて大翔の姿を確認した瞬が笑顔を浮かべ、そしてなぜか固まった。
いや、瞬だけではない、永久の笑顔も引き攣り、珍しく真琴までもが青ざめている。
「何がそんなに面白いんだ?」
大翔の身体を絶対零度の凍気が取り巻いている。
ゾンビである水島がその冷たさを感じられるほどに・・・・・・
「大翔くん?」
大翔は水島の背中から降りない。
「大翔くんが教えてくれたプロローグの反対、本当はエピローグって言うんだって」
水島の声が遠く感じる。
大翔はただ黙って部屋の中の三人を見詰めていた。
じーっと・・・・・・
一人ずつ、ゆっくり、じっくり・・・・・・・・・
(水島・・・・・・そういう事は前もって言っておけよ)
無言のまま見詰められる恐怖に、いつまで耐えられることやら・・・・・・
fin
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