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第7話 カクテル3p

「なんだよ、これ、コーラと違うじゃんか」  目の前に置かれた真っ赤な液体の入ったグラスに顔をしかめて天谷は言った。 「これはトマトジュースだ。天谷、野菜ジュース好きだったろ。ちょうどうちに美味しいトマトジュースあったから飲んでもらおうと思ってさ」  日下部はニヤニヤしながらそう言う。 「トマトジュースはわかったけど、日下部さ、お前、なんでニヤついてんだよ」  天谷が鋭く日下部を睨む。  日下部は天谷から視線をそらせた。 「はぁぁーっ? ニヤついてなんかいねぇだろぉ。何言ってんのかなぁ」  日下部の、堪えている笑い声が漏れる。 「お前、なんで俺から目をそらして笑ってるんだよ」 「笑ってないよ。クッ!」 「おい、怪しいな、あっ!」 「へっ?」 「さては、このトマトジュースに、お前、何か仕込んだんじゃないのか?」  天谷は日下部に人差し指を向けズバリと言った。 「はっ、はぁぁーっ? 何か仕込むとかあり得ないってぇ!」  日下部の額に汗がにじむ。 「うーむ、お前が何か仕込むとして、例えば……」 「た、例えばぁ?」 「タバスコとか」  その天谷の答えに日下部は気が抜けた。  日下部の顔は完璧に呆れ顔になっていた。 「タバスコ仕込むとかねぇよ! そんなベターなの、ネタ以外でやらねぇから! いいから飲めよ、お前が飲まないとせっかくのトマトジュースが無駄になるんだぜ」 「なに怒ってんだよ。じゃあ、一回お前自身が飲んでみろよ。お前が飲んでなんともなかったら飲むから」 「疑い深いやつだな。わかったよ、ほら!」  日下部はテーブルに置かれたグラスを手に取るとトマトジュースを三口ほど飲んだ。  天谷はトマトジュースを飲む日下部の様子をジッと観察する。  トマトジュースを飲んだ日下部に特におかしな様子はない。 「どうだ、なんにもないだろ。満足した?」  勝ち誇った風の日下部に、天谷は舌打ちをすると、日下部からグラスを奪い取り、トマトジュースを、喉を鳴らして飲んだ。  ゴクリゴクリという音が部屋に響く。 「おい、天谷、そんな煽って飲んで大丈夫かよ?」  日下部が慌てて天谷のグラスを持った腕を掴む。  だが、もうグラスは空だ。 「天谷?」 「…………」 「なぁ、天谷?」 「なにこれ」 「天谷、怒った? ごめん」 「なにこれ……おいしいじゃん!」  天谷は目を輝かせて空になったグラスを見つめている。 「は? え、あ、ああ、だろっ?」  日下部は明らかに戸惑っている風だが、天谷はそんな日下部の様子を全く気に留めなかった。 「日下部、おかわり!」  日下部がいたずらにトマトジュースに入れたウォッカ。  天谷はそれにすっかり酔っ払ってしまっていた。  ブラッディメアリー。  トマトジュースとウォッカのカクテル。  天谷はそれをずっと飲み続けている。  天谷はすっかりブラッディメアリーにハマってしまった様子だった。 「んーっ、んんっ……トマトジュース、おいしい。日下部ぇ、もっと」 「天谷、もういい加減にしろ、グデングデンじゃないか」  天谷に引き換え、日下部の酔いはすっかりと冷めていた。 「やっ、もっと、もっと欲しい」  天谷は長い前髪に人差し指を絡ませながら上目遣いに日下部を見る。  天谷を見る日下部の胸は高鳴る。  酔いが回った今の天谷は、実に色っぽかったのだ。 「まだグラスに半分残っているだろ、それ飲んだらもっとやるから」 「うん、わかった」  天谷は頷き、震える手でグラスを手に取るとブラッディメアリーを口に含む。 「天谷、垂れてるよ、拭けよ」  天谷の唇からブラッディメアリーが滴っている。  日下部がティッシュを一枚取り、天谷に渡す。 「ん、日下部、拭いて」 「はぁ? お前、な、なっ、なに言ってんの? 自分で出来るだろ!」 「出来ない、んっ」  天谷は目をつむり、日下部の方に唇を突き出した。 (まじか、この状況は一体なんなんだ? 何かの陰謀か? ベターが過ぎる!)  日下部は恐る恐るという風にティッシュで天谷の唇を拭った。 「うっん。ありがと、日下部」  天谷が少し照れ臭そうに、にこりと笑った。 (うっ! こいつ、か……可愛い)

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