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第206話 恋人アプリやってみました45p
赤式からの長い、長いメールはが終わる。
天谷は息をつくと、スマートフォンを机の上に置いて、眼鏡をかけ直してから考え始めた。
(赤式さん、恋人さんと別れちゃったんだな。あんなにお似合いの恋人同士でも別れなきゃいけないのかな。ちょっとショック。赤式さんから別れを切り出したって。ノンけって何のことだろう。恋人さんが自分以外の人と上手く行ってる未来が見えたから別れたってことみたいだけど、人の未来が見えるってどういうこと?)
様々な疑問が天谷の頭を駆け巡る。
考えなければならないことが多すぎて、天谷の頭はコンピューターのようにフル稼働する。
(赤式さんには、今は片思いの相手がいるんだ。叶わないかもしれない恋、か。不二崎もそんな恋をしてるって言ってたな。不二崎の恋、叶うと良いな。赤式さんの片思いの相手には好きな人がいるんだよな。その恋を赤式さんは応援してるってこと? 何か複雑)
赤式の切ない恋。
実るのか、実らざるのかを、未来が見えるという赤式はわかっているのだろうか。
それについて、赤式は何も語らなかったので天谷には知れない。
天谷は赤式の気持ちを思い、今日、何度目かのため息を付いた。
(赤式さんの恋人さんとの旅行は上手くいったんだよな。幸せを感じられる旅行……俺もそんな旅行にしたいな。日下部が俺と一緒に旅行して幸せを感じてくれたらやっぱり嬉しいし。その為に、俺に出来ることがあれば、やってみても良い……よな)
日下部との旅行について、天谷の気持ちはちょっぴり前向きな方向へと変わっていた。
これも赤式の魔法のなせる業だ。
(二人で恋愛を楽しむ……恋愛か。してみたい……かも。今まで恋愛ってどういうことかいまいちわからなかったけど、赤式さんの旅行の話聞いてたら、何となくだけど、わかった気がした。日下部となら、恋愛してみたいかも。恥ずかしいけど、でも、ほんの少しだけ勇気を出せば……何か変わるかも知れない。赤式さんみたいに、勇気を出せば……そうすれば、愛おしさとかも、もっと俺にもわかるかも知れない。でも、その勇気が中々出ないんだよな)
今まで置き去りにして来た感情を掴んでみたい気持ちに天谷はなっていた。
変わりたい、でも、やっぱり勇気が出ない。
天谷は、また、ため息をつく。
(よし、取り敢えず、赤式さんに返事を書かなきゃ! えーっと……)
天谷は赤式への返事の文書を、机に頬杖をついて考える。
中々思うように気持ちを伝える言葉が出て来なくて、天谷は何度もスマートフォンに打ち込んだ文書を削除した。
今、日下部に対して思っている気持ち。
赤式からの質問の答え。
そして、赤式からのメールを読んで、自分がどう思ったか、赤式に訊きたいことは何かを一つ一つ考えて書いてゆく作業。
その作業は天谷にとって、そのまま自分と向き合うのと同じことだった。
これからどうなりたいのか、どうしたいのかを、自分に問いかけて、天谷は文書を書くのにのめり込んでいった。
やっと文書が出来上がる。
天谷の額には薄っすらと汗が滲んでいた。
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