清水寺の次に行った神社や、気まぐれで入った水族館のこと、そこでの赤式と恋人との思わず笑みの溢れるエピソードの数々。 　天谷は顔を綻ばせながらメールを読み進めていった。 『京都の町を二人で気の向くままに歩いて、気が付けば、そろそろ帰りの新幹線に乗らなければならない時間に。 　わたくし達は、帰りの為に京都駅へと向かいました。 　彼との旅を振り返り、わたくしはとっても満たされた気持ちでいました。 　でも、名残惜しいような。 　京都駅へは直ぐについてしまって。 　駅のロッカーから荷物を出している最中に、彼が、凄く楽しかったですねって、そう言ってくれて、嬉しくて。 わたくしも同じ気持ちでいたから、二人が同じ気持ちでいることが嬉しくて。 　帰りの新幹線の中で、疲れた彼は、わたくしの肩にもたれかかりながら眠りました。 　彼の重みを肩に感じるのが、何とも言えず、心地よくて、ちょっぴり恥ずかしくて。 　幸せだな、と思いました。 　以上がわたくしの旅の話で御座います。 　長々と失礼致しました。 　余談となりますが、この彼とは、わたくしが大学を卒業すると同時に別れてしまうことになるのです。 　別れはわたくしから切り出しました。 　彼が嫌いになった訳ではありません。 　彼は元々ノンけでして、それでもずっとわたくしのことは大事に愛してくれておりましたが、ふと、わたくしの脳裏に、彼が女性と結婚して子供を授かり、幸せに過ごしている姿が浮かんで、それが離れなくなって。 　そんな未来を奪うことに、わたくしは罪悪感を感じてしまったので御座います。 　わたくしは、人の未来が見えることがありまして。 　別れることに、彼は反対致しましたが、わたくしが押し切る形で別れました。 　彼の為に、と。 　でも、彼の為、と言いながら、わたくしは逃げたのでしょうね。 　彼の未来を奪うことの恐怖から。 　わたくしは弱い人間なのです。 　彼は、沢山の大切なものをわたくしにくれました。 　わたくしは、彼と恋愛が出来て幸せです。 　彼は今、結婚していて、子供が二人いて、幸せだということです。 　わたくしはというと、現在は片思いの相手がおります。 　この恋は、叶いそうにないような恋で、と言うのも、相手はやっぱりノンけで、相手にも片思いの女性がいるのです。 　相手の思い人はとっても素敵な女性で、わたくしは相手の恋の相談に乗る立場におります。 　相手は、本当に彼女に惚れていて、わたくしは彼女を真剣に思う相手のことが愛おしいので御座います。 　恋とは不思議なものですね。 　叶わないと知りながらも、こんなにも心を振り回されるのですから。 　大学時代の彼と別れたことは黙っておこうかと思ったのですが、何となく、お話ししておいた方が良いように思えまして。 　@あま様に色々とアドバイスをしておきながら、自分のこととなるとからっきしダメなわたくしなので御座います。 　わたくしの旅の話が何かのご参考になったならば幸いです。 　@あま様、わたくしは彼と恋愛が出来て本当に幸せで御座いました。 　@あま様も恋人様といて幸せでいらっしゃいますよね。 　@あま様は恋人様を愛していらっしゃると思いますし、恋人様もまた、@あま様を愛していらっしゃると思います。 　固く考えずに、愛し合う二人で恋愛を楽しまれてみてはいかがでしようか。 　ほんの少しの勇気を出して。 　恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』