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第204話 恋人アプリやってみました43p

 相手のことで焦り、恥ずかしがり、戸惑う。  相手のことで、どきどきして、そわそわして、気持ちが弾んで。  恋する気持ちが少しだけ天谷には、わかったような気がした。   『清水寺でまったりしたわたくし達は、三年坂、二年坂にひしめくお店を見て回ることに致しました。  お土産なども買わないと、でしたので、ゆっくりと回りました。  坂には色々なお店があって、見ているだけでも楽しいもので御座いました。  八つ橋を売っているお店で、八つ橋の試食なども致しました。  彼ったら、八つ橋を全種類食べて。  そんな風に過ごしているうちにお腹が空いて来たので、坂の内のお店に入って蕎麦を二人で頂きました。  ビールも頂いて、美味しかったです。  お腹も膨れて、お土産も買い、坂も残すところ後僅かのところ、彼が、そっと、わたくしの手を握って来たので御座います。  わたくしは驚きでビクリと体を震わせました。  人前で、こんなことを彼の方からしてくるなんて、と胸がときめきました。  彼の横顔を見ると、顔が赤くて。  彼が恥かしがっていることが直ぐにわかりました。  でも、彼はわたくしの手を離しませんでした。  わたくしは、彼の気持ちに応えたくて、勇気を出して彼の手を握り返しました。  そうすると、彼が、わたくしを引き寄せて。  耳元で、好きだと一言囁きました。  わたくしの心臓は止まりそうになりました。  坂の終わりまで、わたくしたちはずっと手を繋いだまま。  彼と手を繋いでいる間、時間がスローモーションになったようにゆっくりと感じていました。  わたくしは思いました。  彼が好きだと。  坂が終わり、手が離れる瞬間、彼の唇が一瞬、わたくしに触れました。  一瞬のキス。  わたくしは、もうどうしたら良いのかわからなくなりました。  でも、彼は、顔を赤らめながらも、何事も無かったかのように明るく話を始めて。  何ていうのでしょうか、してやられた感じで御座いました。  今にして思いますと、彼のあの態度はアルコールのせいもあったのかな、と。  人前で、あんなこと、若さゆえもあったのかも知れませんね。』    幸せに包まれた赤式のメールの文書。  天谷の顔は綻ぶ。 (良いな、こんな風なのって。付き合ってるって感じで。こうしてちゃんとしたカップルの話聞くと、俺と日下部の仲ってやっぱり友達同士って感じなんだよな。まぁ、それが心地よくもあったりするんだけど。俺達も、どっちかが、後一歩踏み出したら、赤式さんと恋人さんみたいな感じになれるのかな。俺の方から……っていうのはちょっと怖い。失敗したらどうしようって思っちゃう。でも、何もしなかったら、ずっとこのままで……)  友達同士の雰囲気のまま日下部とこのままでいるか、それとも、一歩踏み出して、それ以上の関係を結ぶか、天谷には究極の選択だ。 (まだ、決められない。勇気がまだ出ない)  天谷は瞬きを数回すると、赤式からのメールの続きを読んだ。

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