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第217話 恋人アプリやってみました56p
恋愛の第一歩。
アルバイトで疲れている日下部を癒すこと。
天谷はその為に赤式からのアドバイスを実行に移そうとしていた。
それは、日下部に、ある言葉をメールで送るというものだった。
「えっと、日下部、バイトお疲れ様。ちゅっ、ハートマーク……っと」
天谷は口に出した言葉をメールに打ち込む。
そして、それを改めて見てみる。
その文書の恥ずかしさに、天谷は赤面する。
「っつ、ハートマークとか、初めて使う。本当にこれで日下部を癒せるのか? ばかにされるだけな気がする。赤式さん、信じていいのですか?」
天谷は躊躇いながらもメールを日下部に送信した。
「うわっ、マジで送信しちゃった。どうしよう」
天谷は恥ずかしさで両手で顔を覆う。
日下部からの返事を待つ間の天谷は、恥ずかしいメールを送ったことへの後悔と恥ずかしさで悶え苦しんでいた。
ベッドの上で、枕を強く抱きしめながら、天谷は沈んだ気持ちでいた。
(ああっ、死にたい。マジで恥ずかしい。あんなの、俺にはやっぱり無理。メールを送る前にタイムスリップしたい)
落ち込む天谷のスマートフォンが鳴る。
天谷はベッドの上に転がるスマートフォンに飛びつくと、スマートフォンの画面を見る。
メールが一件入っている。
天谷が確認すると日下部からだった。
天谷はドキドキと胸を鳴らし、日下部からのメールを読む。
「えっと、なに? 天谷、サンキュー! ハートマーク……」
天谷は日下部からのメールを読み、固まってしまう。
天谷の顔は、非常に赤い。
(今まで日下部から、ハートマークの絵文字のメールなんて貰ったこと無いのに。何これ、日下部、どういうつもりで……)
天谷のスマートフォンが電話の着信を告げて鳴り出す。
着信の相手は日下部。
天谷は息を呑んで電話に出た。
「もしもし」
小さな声で、天谷がそう言うと、もしもし、と日下部の声が返って来る。
「あ、あのっ、日下部っ」
さっきの日下部からのメールに焦ってしまった天谷はぎこちなく日下部の名前を呼ぶ。
『何?』
あっさりとした風に日下部が言う。
「な、何でも無い」
『変なやつ。なぁ、天谷、さっきのメール、どういうつもりだよ』
日下部がそう訊いて来た。
「ど、どういうつもり、って、あの、日下部、疲れてるみたいだったから、だから……」
天谷が言い訳みたいにそう言うと、日下部の小さな笑い声が聞こえた。
『お前のキャラじゃ無い』
そう言われて、天谷はムッとする。
「なっ、悪かったな。もうしないから」
『ばか、そう言うんじゃ無くて、嬉しかったよ。すげー癒された。ありがと』
優しい声で、日下部が言う。
「ほ、本当?」
『うん、本当。愛を感じた』
「あ、愛?」
『うん』
「そうか」
『うん』
「なら、良かった」
『何それ、それって、お前が俺を愛してるってこと?』
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