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第216話 恋人アプリやってみました55p
『赤式さんへ
本当に有難う御座いました。
俺、頑張ってみますから。
約束します。
きっと最強の二人になりますから。
自信は無いけど、頑張ってみます。
どうか見守っていて下さい。
赤式さんが、見守っていてくれていると思ったら安心します。
俺は、本当に弱くて。
困ったら、もしかしたら、また赤式さんに相談するかも知れませんが、その時は、少しは成長している自分になっていたいです。
感謝の気持ちを込めて。
@あま』
送信のアイコンを、天谷は押した。
赤式からの返事は直ぐに来た。
『恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式で御座います。
@あま様の、その強い意思があれば、全て大丈夫で御座います。
わたくしも陰ながら見守らせて頂きます。
いつでもご連絡下さい。
困ったときも、そうでない時も。
有難う御座いました。
良い恋を。
恋人アプリ・カスタマーセンター担当赤式』
天谷は笑顔を浮かべ、赤式からの返事を読んだ。
二人の長いやり取りはこれでお終いとなった。
天谷は、赤式との別れを名残惜しく感じ、しばらく、赤式からのメール全てに目を通して過ごした。
気が付けば、図書館の人はまばらになっていた。
ふと、天谷がスマートフォンで時間を見れば、もう午後の四時半だった。
(帰ろう)
天谷は席を立ち、机の上の本を拾うと、その本を借りようかどうしようかと悩む。
結局、本の内容なんて何も思い出せないことに気付くと、天谷は本を本棚に戻した。
図書館を出ると、生暖かい風が天谷の頬を撫でた。
蝉が、何かの始まりを祝福しているかのように一斉に鳴き出して、コーラスを奏でる。
帰りの道を歩く天谷の足取りは軽かった。
駅までがあっという間で、電車に乗っている間は、天谷は、また赤式からのメールを読んで過ごした。
今まで誰にも相談出来なかった悩みや不安に対しての赤式からの真面目な答えを、天谷は自分の体に吸収するように、言葉を拾ってゆく。
電車を降りる頃。
(まずは、第一歩)
と、天谷は心の中で呟いていた。
夜。
天谷は自分の部屋のベッドに腰掛けて、スマートフォンをそわそわと眺めていた。
(日下部、そろそろバイト終わる頃……だよな。よし……)
天谷は緊張した面持ちで日下部にメールを打つ。
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