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第1話
またこの季節がやってきた。新人研修を経て、晴れて社員に採用される。そして入社八年目の俺は、毎年恒例行事みたいに新人の教育係として任命された。
部長曰く・・・
「篠原くんは教えるの上手いからね~~」
だ!! ただ面倒見るのが面倒なだけやろ!
(決してシャレじゃない!至って真面目だ!)
クソっ! ズラひん剥いたやろうか!
新人社員は六人。情報システム部門に配属されたのは一名。新人研修で有能な人材の一人だった。
名前は黒石真琴・・・
女? 男? どっちだっけ?
まぁ、ええわ……
「すみません情報システム部門ってこちらですか?」
「はい、そうですが」
モデル並の身長に濃紺のスーツが似合う男と今俺が開けようとしたドアの前で鉢合わせた。
「今日から配属になりました黒石です」
男の俺でも見とれてしまう程、整った顔をしていた。その口元が一瞬笑ったように見えたが気のせいだったか……
「篠原リーダーですか?」
落ち着いた声が俺の名前を呼んで我に返った。何故名前を知ってる?って顔をしていたんだろう。黒石は、無表情で俺の首からぶら下がっている社員証を指差した。
「……そうだ。 中に入って…早速、自己紹介してもらう」
俺にはすんげー無愛想だったのにだ! なんだその営業スマイルはどこから出てきた!
「黒石く~~ん、頼むよ~その顔活かしてバンバン営業してきてね〜~」
「部長は絶対それ取った方が男前度上がりますよ」
部長の頭を指差しながら黒石が言った。一瞬で周りの空気が凍りついた。
あちゃ~こいつ禁句を言いやがった! やばい! ここは俺がなんとかしんと!
「や~ん、黒石くんが言うなら外しちゃおっかな」
っえ? 部長?
「はい、僕好みです」
「そうかい?」
え? え? 部長ってあんなキャラだっけ?
(注意: 篠原だけが知らない、気付いてない)
「そうですよ部長!」
(部長がゲイでバリネコだって事)
皆? え? つーかなんだこの茶番は?
恐るべし黒石!
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