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第3話

あー。なるほど。これはヤバイな。うん、多分ヤバイ。見るからにヤバイ。マジでヤバイかもしれない。俺の予想が正しければ超ヤバイやつだ。 峰芝君の顔が少しトロンとして、頰が紅潮している。少しヨダレが垂れてきている。彼の彼はすでにチョモランマだ。なるほどなるほど、これがフェロモンの効果というわけか。一瞬でここまでとは少し効きすぎな気もするが…。凝縮されたフェロモン恐るべしだな。興味深い。 「きょ、教授。なんか僕おかしいですぅ。あー。教授いい匂い。すごく可愛く見えますぅ。身体が熱いんです。助けてください〜。」 アルファ性とベータ性ではフェロモンに対する影響の違いがあるという報告があったが、どうなのだろうか?俺は直接にフェロモンを浴びたにもかかわらずさほど変化はない。 周囲に欲情の対象がなければ?フェロモンだけで欲情するのか?俺が可愛い?何を言っているんだ? いろんな考えが浮かんでは消え、なかなか思考がまとまらない。 「峰芝君。しっかりしたまえ。確かに君はおかしい。それは香水のせいだ。普段のキリッとした峰芝君を思い出せ!どうしたほら!」 「えぇ〜。そんなことないレすよ。教授は小さくて何事にも真摯で無垢で。手も綺麗で可愛くてすべすべ〜。」 会話が成立していない。一方的に褒め言葉を浴びせられる。これがアルファ性の欲情というものなのか。口説き方もお上手だ。無垢って単語を人に使うところを初めて聞いた。 俺は褒められるのは苦手だ。それに対して肯定も鼻につくし、かと言って簡単に否定もできない。でもそれは嬉しくないというわけじゃない。 それにこんな風に一方的に褒め言葉を言われたことも生まれて初めてだ。 「わ、やめないか!勝手に俺の手を握ろうとするんじゃない!俺はベータ性だ!男だぞ!断じて。そう断じて!君の対象には当てはまらないはずだ!!」 「そんなことないレす。あぁ。愛しの亜門教授ぅ。好きですよ〜。」 手を握られ、好きっていう言葉を聞いて瞬間的にに思考が停止してしまう。 男というのは興奮すると好きでもない人にこんな簡単に好きと言ってしまうのだろうか? 俺にはわからない。フェロモンのせいだと思いながらも、初めて人からこんな強烈な行為を向けられて、俺も動揺しているのかもしれない。 果たしてこれは真実の言葉なのか?それとも興奮の結果、ただ欲を満たしたいがためだけに言っているだけなのか? 今はそんなこと考えている場合じゃないのに、どうでもいいハズの疑問が頭に張り付いて離れない。 「す、好きってなんだ!急にそんな都合のいいこと言われたところで、俺はなびかんぞ!」 ちょっと反応が過剰すぎるなと思う。確かに凝縮したフェロモンは強力だ。ゆえにアルファ性が我を忘れることもあるだろう。 それでも、あぁ、やっぱり変だ。俺の予想ではここまでの反応にならないはずだった。 「わかってますよ〜。教授の気持ちは知ってます。いいんですよ。大人ぶらなくたって。たまには甘えてくださいよぉ。」 峰柴くんの言葉は優しかった。俺の気持ちいいところをよくわかっている。彼のその能力は才能によるものなのだろう。アルファ性が持つカリスマ性というところか。 理屈はわかっているはずなのに、冷静なはずなのに、心臓はドキドキしていた。自然と呼吸も少し荒くなる。 「教授は僕の言葉疑ってりゅかもしれないですし、フェロモンのせいだ〜なんて思ってるかもしれないですが、そんなことないレすから。 一緒に研究を初めた日からずーっと慕ってきたんですよぉ。僕は。」 峰芝くんは我を忘れているはずなのに、俺に対しての正解を的確に導き出していく。 こうしてみると人を褒めるという行為は案外理論的な行動ではないのかもしれないな。 峰芝君の言葉を聞いているとこっちもボーっとしてくる。 「き、君の言いたいことはよくわかった。君の気持ちはすごく嬉しいよ…。だから腕を離してくれないか。」 いつのまにか峰芝君に両腕をがっちりとホールドされている。自然な動きで、相手に警戒感を与えず、さりげなくスマートに、そしてがっちりだ。 いや、俺は警戒しまくりのハズなんだが…。気づいたらこうなっていた。身動きが取れず俺は峰芝君から目を離すことができなくなっていた。 「教授…。僕の気持ちが伝わったみたいで嬉しいレす。さぁ、目を瞑ってくラさい…。」 俺のなんの気持ちが伝わったのかわかったもんじゃない。 「涙目の教授も可愛いレす…。んーーー。」 「あっ…。ダメダメダメダメ。峰芝君、俺は初めてなんだ!ちょっと待っ…。」 もうここまでか…。 そう思った矢先。峰芝君がそのままバタリと倒れ込んでしまった。 「だ、大丈夫か!峰芝君!おい!峰芝君!」 …

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