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第2話

「だ、駄目ですよ!そんなの、人体実験じゃないですか!!そういうのはネズミか何かで試せばいいんです!」 「峰芝君。君だってわかっているだろう。ネズミにはアルファ性、ベータ性、ガンマ性の分類はない!いいから観念して実験の被験者になることを了承したまえ。」 「嫌ですよ!!」 悪魔の顔をした教授から研究の内容をざっくりと聞いた。そこからかれこれ一時間、この問答を続けている。どうして教授は諦めてくれないのか。 「安心してほしい。この実験のもう一人の被験者、この香水を浴びる側の方もどこぞの馬の骨というわけではない。また安全への配慮もバッチリだ。そうだというのに一体何が不服なのだ?」 実験の概要は単純だ。ベータ性に対してこの香水を吹きかけ、アルファ性である僕がどの程度の反応を示すのか? もちろんお互いの安全を考慮して二人の間には空気穴だけが空いたガラス板で区切られるとのこと。しかし… 「何が『安心してほしい。』ですか!勝手決めないでください!!」 問題はフェロモンにあてられたアルファ性は相当な欲情反応を示すと言うこと。それを見られると言うのはオナニーを見られるようなもんだ。これは例えじゃなくて実際そのものである可能性だってある。 「し、しかし。君の協力無くしては、この研究は日の目をみない。頼む。」 「どんなに頼まれてもダメなものはダメです! 他の人に頼めばいいんですよ!!」 「一般に募集もかけたのだ。しかしアルファ性の協力者は得られなかった。俺にはもう君しか残されていない。本当に頼む。」 ぐ、ぐぅ〜! どれだけ頼まれても、どんなふうに頼まれても、無理なものは無理だろう…。観察されて、記録される。僕にとって一番恥ずかしい部分が、だ! 「こ、こんなもの…。ドブにでも捨ててしまいましょう!」 僕は教授の手からフェロモン香水を奪いとった。教授が諦めないのであれば、強行手段に訴えるしかない。 「お、おい。やめろ!俺の集大成だぞ!」 さすがの教授もこれには焦ったのか、すぐさま香水を取り返しに手を伸ばしてくる。 「教授が悪いんですよ!こんな人の道を踏み外した実験!」 「減るもじゃないだろう!それに研究というのはいつの時代だってそういうものだ!」 香水は教授と僕の手を行ったり来たりする。 くそ!これを教授に渡してなるものか!自然と僕の手にも力が込められていった。 「へ、減るんですよ!心が!僕はそんな実験に協力でき…」 プシューーー あっ…。気付いたときにはもう遅かった。いつの間にか僕の指が香水のノズルを押してしまっていた。霧状に噴射したそれは、綺麗に教授にふりかかり、そして…。 あぁ、なんだか良い匂いだな。と、思った瞬間。僕の意識はすでにとんでいた。 …

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