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プロローグ

 花のような香りに、はっと顔をあげた。  隣には嬉し涙を流す花嫁がいるのに、ホテルのロビーに溢れる人混みに、君の姿を探してしまった。  昨夜……最後に君を抱き、別れを誓った俺達を繋ぐものは、もう何もない。 だからこれは残り香だと分かっているのに、記憶が君を求めてしまうなんて。    

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