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白い袋の中身
パーティのあった一週間後、浬委 さんの久留米家から使いの者だという人が「本日、お世話になります」と言って家に入って来たのは執事のような人と、その後方に4人が連らなってやってきた。
心なしか皆黒いスーツと黒のサングラスに息をのむ……。
物凄く厳かな雰囲気でオレと父さんは5人の使者に囲まれている。因みに母さんは幼いころに亡くなっていて時々近居に住んでいる父さんの姉である美咲おばさんがやっては来るけど、今日は呼んでいないみたいだ。
和室の客間に通して、なんだろう…お頭付きの鯛やスルメなどいろいろ数点ドンッと目の前に差し出されている。
父さんの顔を見ると、ちょっと汗ばんでいるけど正座をして手をついて頭を低く下げたので、オレも見習って頭を低く下げた。
心情は??だったけど、この異様な空気を読むしかなかった……。
「本日は準備品として略式でございますが久留米家より結納品を治めさせていただきました」
「はい。お受け取りいたします」
「……?」
結納品?!
「と、父さん…結納って…?」
父さんはオレの言葉を無視して正座の間々指をついて一歩進むと、スルメの上にあった白い立派な水引の袋を手にとって中身を覗くと「恐れ入ります」と、父さんは深く頭を付けてお辞儀した。
な、なんだ、父さん、何を受け取ったの!?
■ ■ ■
実はあのパーティで浬委さんとスマホのIDを交換した。
オレは何も節操がないわけじゃない。
浬委さんはきっとオレの家よりは家柄が良くて大金持ちだという事。
なので、ステータスとか今まで寄って来た人たちとは違うのだと思ったから。
浬委さんは「せっかくのご縁ですから、もっと尚史 君とお話したいです…だめですか?」と、頬をピンク色に染めてちょっと恥じらいに言った。そ、それにこれで断るなんて浬委さんに恥を掻かせると思ってです!
5人のお使いの人たちが帰ると、なぜか逃げ腰の父さんを捕まえて聞き出した。
すると父さんはとんでもないことを口にしたんだ。
「な、なんだかな、突然、会社の株が下落して危なくなった時に久留米財閥の取締役から心配されて融資を受け入れることになったんだよ……条件付きで」
条件とは、浬委さんとパーティ会場で会う前から浬委さんとオレの婚約が既に決まっていたらしい。
「婚約!?オレと浬委さんが!?」
うれし…じゃなくて!こんなことに浬委さんを使うなんて許せないよ!!まるで借金の形じゃないか!?
きっと、このことを知って心を痛めているんじゃないのかな……今日は全く連絡がつかないし……!!
「しょうがないんだよ、息子よ……浬委さんは確か取締役が年老いて作った末っ子の愛児なのでもうもう大変なんだよ。」
「それじゃその白い袋の中身って融資の小切手なの?!」
「だから会長は黒を白にすることはたやすいんだよ。世界の秩序だって変えられそうな人なんだから……ッ」
父は半泣き状態だった。なんだか胸が苦しくて見ていられなかった。
父さんの状態からもう考えるのは怖いと思ったので、どうにか浬委さんと連絡を取って婚約じゃなくて、別の条件を考える手助けをしてくれないだろうか……。
そうしないとオレだって浬委さんと会えなくなる。
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