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46 妄想まみれの可愛い人 完
白い木造の古いけど趣があってクラシカルでとても素敵な教会。
浬委さんと手を繋いで扉の向こうに足を合わせて歩いた。
バージンロードなんて浬委さんは言う。この場合はどちらかが父親と一緒に歩くんじゃなかったかな?……オレがお父さん役?
正面には五色に光ったステンドグラスに映えるイエスキリスト像がオレたちを待ってくれている。
「尚史くん、緊張してる?」
「そ、そんなことないですよ?浬委さんはどうですか」
「僕は緊張してます。手足が一緒に出てしまうくらい、だって尚史くんが僕の横で歩いてくれているのですから。幸せで緊張してます」
「う…あ…そ、そうで……っ」
ふふと綺麗な笑顔でオレに微笑む浬委さんは、確かに繋いでいる手が微かに震えている。
「これからですね……オレたち……」
「……はい。でもここまで来ました。やっと来れましたよ」
オレの方に振り向く浬委さんと目が合って、その場でちょっと足を止めると頬に唇を寄せられてキスをくれた。
オレも同じように、浬委さんの頬に唇を落とした。
数歩歩いて、今度は繋いでいる指にキスを落とす。お互いに笑い合いながら。
これじゃキリスト様のところに着かないですね、と笑う。
それでもやっとキリスト像のところまでやって来た。
台座に花冠が置いてあって、浬委さんは手に取るとオレの頭に被せた。
「え、これ…ってオレ、ですか?」一つしかない花冠に手を添えて台座を見た。
「それは尚史くんのです。尚史くんは、ぼ…ううん、俺のハニーだから、可愛く着飾ってください」
ボっと頬に熱いものが着火したようで……急いで手で仰いだ。
浬委さんが『俺』なんていうのは反則って言うか……また男前の浬委さんを思い出してしまう。
「それと、尚史くんのブレザーに付けているピンクのタイピンは、ファディの印なんです。指輪交換のようなものなんですよ」
浬委さんから貰ったお守りだというタイピン……そ、そうだったんだ、そんな意味が……!
教室内でタイピンは目立たなかったんだろうか……思わず冷汗が出てしまいそう。
「嫌ですか?」
ふるふると首を横に振った。
「こんなに早く教会に来るのなら、キリスト様の前でタイピンを交換をしたかったなぁ…」
なんだか突然残念そうな表情をするので、オレは極自然に言葉が出た。
「本番は本物の指輪を交換しましょう?」
浬委さんの表情は微笑むどころか歪んでしまった。オ、オレ…何かヤバい事を言ってしまったんだろうか!いや、そんなことないはずでっ
「……だぁ」
「え?」
「尚史くんからの……プ、プロポーズ……っ」
あ!!!
キ、キザな事を口走ってしまった!?うわわわわ!!!
「ありがとう、尚史くん……とても嬉しい言葉だよ」
そう言って浬委さんはポロポロと溢れてくる涙を両手で拭いながらも、それが止まらなくて、オレも浬委さんの目元に溜まっている涙を拭った。
浬委さんの綺麗な涙……キラキラ光ってキレイだ。
男の浬委さんでも、やっぱり可愛くてキレイで妄想好きで、そして、オレが好きな浬委さん。
出会って、好きになって、騙されて、深い愛を知って、触れた……まだ、もっと知りたいと思った。もっとオレを知って欲しいと思った。
これからは浬委さんを思ってオレが出来るだけ浬委さんにふさわしい男になって、浬委さんを守っていく。絶対に!
きっとこれから邪魔をしてくるだろう“あの人”には負けない。
浬委さんをいつも笑顔にさせて、心から幸福にできるのは平凡でカッコイイことなんて出来ないけど、好きな気持ちは負けないそんなオレ、玉井尚史を見ていて欲しい。
「浬委さん、これからもよろしく」
「はい。これからもよろしくね、尚史くん」
花のような笑顔が凛々しい素敵な笑顔に変わった。
そして、またオレは浬委さんに惚れるんだ。
ーFINー
*詰まりながらも最後まで読んでくださってありがとうございました。
*今後は二人のその後やいろいろ書ききれなかったエピソードを番外編として書いていきたいと思います。
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