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45 浬委の反省と幸せ
(浬委視点)
尚史くんと僕、浬委と二人で年代物の教会の扉を開けて、入った。
映画で出てくるノートルダム大聖堂のような壮大で美しい教会ではないけれど、真っ白い壁や柱で覆われた教会内に、中央で威厳として祀られているキリスト像、その横にはステンドグラスがキラキラ色とりどりに反射してキレイ。僕たちには十分すぎる。
今の僕たちには小さくて可愛らしいこの教会が似合っている。僕たち学び舎の思い出に残る可愛い教会――。
中等部なって、父の会社でのプライベートクリスマスパーティで幼い時に出会った事がある尚史くんの成長した姿を見かけて僕は気になり、次第に夢にも出てくるようになって恋心を募らせた。
今度は、父に連れられて来たあるパーティでは、尚史くんを再び見かけて今度は僕の方から声を掛けた。飲み物を渡したような気がする。恥ずかしそうに飲み物を受け取っていた。あの頃はあまり……ほとんど話すことが出来なかった。ちらちらと尚史くんの姿を見るだけだった。
父に内緒で尚史くんの事を調べたくていろいろ駆使して探偵社とかデータなり集めた。
普段と違う僕に違和感を覚えた父は、僕の尚史くんに対する想いを知られて泣きながら好きだと伝えた。信じられないことにそれがキッカケで父は僕に協力をしてくれて、あのパーティを開いてくれた。実は、尚史くんと僕のお見合いパーティが主だった。
「初対面を演出して、浬委に絶対に引き付ける要素を教えよう。必ず成功するはずだ」
父は外国のイケメン俳優のような台詞を地で言うと、僕に母の面影を利用して女装することを進めた。
ゴージャスかつ甘いキュートなドレスアップ。メイクやファンシーな鬘、めいいっぱい時間をかけて尚史くんの為に全て出し切ろうと待ちわびた。
僕はこの時は、父の大胆不敵な計画に震えるほど感謝した。
女装は中等部の学園祭『シンデレラ』役だけだったから普段から女装の趣味はない。でも成りきるのは上手なんだ。
なので、僕は自信がありました。
僕の命運は的中して――尚史くんは僕を気に入ってくれた。あの時の尚史くん、心ここに在らずだったのを覚えている。僕だってそうだった。
父と二人でvサインしたのも覚えてる。
尚史くんのお父様の会社にちょっと細工をして頂いたのはとても心を痛みました。
しかしすぐに、父は細工を解除してなにも無かったかのように元に戻したときはホッとした。もし、戻らなければ尚史くんのご家族ともども父の会社の一つを授けると約束していたので。
僕のところにお嫁にくる約束を果たしてくれた『結納品』……結納品はお嫁に貰う方が献上するというので尚史くんをお嫁に貰うことになった。
全てを伝えたら、きっと尚史くんは僕を軽蔑するでしょうか……。
実はこんな腹黒い、僕を。
それでも、僕は尚史くんが欲しかった。尚史くんの心に近づきたかった。
「尚史くん、僕を好きになってくれて……感謝します」
「浬委さん……オレだって、好きになってくれてありがとうございますっ」
「なおしくーん!!僕…お、おれ、ぜったいに尚史くんを幸せにする!!」
今、僕は尚史くんにジャンピングジャンプして、全部の尚史くんを抱え込んでキスをした。
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