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ルームシェアをしませんか?

 2010年に竣工され、地上6階建て白い鉄筋コンクリート造のL字型公務員住宅。目の前には、コンクリートで固められた駐車場があり、白線で番号を振り分けられている。マンションの手前には白いトタン屋根の駐輪場が5ヶ所に分けられて設置されていた。  時刻は朝の10時過ぎ。まばらに車が止まっている駐車場に蛇行運転をしながら1台の白い車が止まった。  車から降りてきたのは来週から新しく警察官になる新見 衛(にいみ まもる)。黒髪に水色のラフなポロシャツにチノパンを履き、細身の体型で目はぱっちりしてかわいい顔をしていた。手には白い紙袋を持っている。  肩にかけた鞄から鍵を取り出し、それを握りしめながら公務員住宅へと入って行った。  オートロックのドアを持っていた鍵で開け、301号室とタグがついた鍵を見て階段を足早に駆け上る。軽快なリズムで3階へとあっという間に駆け上がり部屋番号を確認しながら足を進めていった。 「301、301……あ、見つけた」  入り口付近にあった階段から廊下の1番端まで歩き、301号室のドアの前に立つ。鍵を差し込んで開けようとした瞬間、隣の部屋のドアが勢いよく開いた。 「!」  急に開いたドアの音と公務員住宅で会う初めての住人にドキドキと心臓の音を立てながら、必死に笑顔を作る衛。少しでも第1印象を良くしなさいと母から言われたことを思い出していた。  開いたドアから見えたのは、茶色い髪の毛。寝起きなのかピンピンに髪が跳ねている。眠そうに欠伸をしながら手を口に当てて現れた。ドアから先に見えた腕は筋肉質で鍛え上げられている。 (警察官か消防官の公安系公務員かな?)  近くには刑務所は無いから刑務官はいない。入国警備官や皇宮護衛官はこんな所にいないだろうと消去法の末、辿り着いた答え。  その予想は当たっていた。 「あっ……」  確かに今日は暑かった。出てきたお隣さんは上の服は着ていなくて上半身は裸だった。腹筋はもちろんのこと、腹斜筋、インナーマッスルまで訓練で完璧に鍛え上げられた身体。そして、色黒。 「どーも、お隣の消防士。東雲です」  東雲が笑えば白い歯がよく目立った。彫りが深くイケメンの部類に入る30代のモテ男。衛は警察訓練学校でそれなりのイケメンと会ってきたが、その部類に東雲は入らなかった。 「は、初めまして! 東雲さん。(わたくし)、来週から公務員住宅にて暮らすことになりました、新見と申します。これからお世話になります!!」  手に持っていた挨拶用の紙袋を差し出すと、東雲は受け取った。軽く紙袋の中身を確認してクスリと笑うと衛に向かってこう告げた。 「新見ちゃん、明日から俺とルームシェアしない?」

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