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ルームシェア始めました

「る、ルームシェアですか?」  衛は実家からの寮生活を経験しており初めての独り暮らしにわくわくしていた。だが、上下関係が特に厳しい世界。それに、職種は違うが体育会系の雰囲気に呑まれ上手く断る方法が思いつかない。  言葉を濁していれば、東雲が追い打ちをかけるように矢継ぎ早に話していった。 「消防士って地域密着型だから転勤することはほぼないんだけど、警察官って3、4年で転勤する人多いから。今の内にお金貯めといた方が絶対いいよー」 「え、そうなんですか?」 「そうだよ、そうだよー。ほら、最近公務員に対する当たりって厳しいからさー。そのうちここの家賃も上がっちゃうよ? どうせ、独身だからって夜勤ばっか押しつけられて家の滞在時間は数時間だけだよ? それってもったいなくない?」 「言われたらそうかもしれないですね……」  腕を組み考え込む衛。その姿を見て東雲はニヤリと笑った。 「でしょ、でしょー。その方がお得だってーそれに、最初って慣れないからさバタンキューだよ?」 「あ、あの。もしかして前にいた人も転勤していったんですか? 前の人は警察官だったって聞いたんですけど……」  職員から部屋の鍵を渡される前に言われたことを思いだし、衛は東雲に聞いた。東雲は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに戻る。 「あ、あぁうん。まぁ……1年で転勤したから」 「1年ですか?!」 「そうそう、だからお金貯めとかないと。引っ越し費用全額負担してくれる時代じゃないし、ここはまだ綺麗だけど場所によっちゃエアコンないし、水カビも酷いとこあるからね」 「う、それは嫌かも……」  衛は中古の公務員住宅で不満を持っていたが、東雲から話を聞いてまだマシだったことに気づいた。猛暑の時代にエアコン無しはありえない。 「どうする? 俺とルームシェアする?」  東雲から再び聞かれ衛は頷いた。 「よ、よろしくお願いします」 「じゃあ、決まり! 書類作成は俺しとくからあとでサインとハンコちょーだいね?」  東雲から握手を求められて衛は握り返す。筋肉質な漢の手に衛の手は綺麗に収まった。そのまま引っ張られ、衛はよろめく。 「そこ突っ立ってないで中入りなよ。今日からここに住むんだから」  さっきよりも近くなった距離に衛は変に緊張した。今度は肩を組まれ玄関の中に引き釣り込まれる。衛は抵抗したが、ガチムチの東雲に勝てるはずもなくあっという間に東雲の家へとお邪魔した。  

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