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紹介したいひと

三歳(みとせ)! 紹介したいひとがいるんだけど!」 バイトを終えた帰り道 親友の玲から電話があった。 そして 開口一番に言われたのが このひとことだった。 「何だよ、また藪から棒に」 玲と三歳はひょんなことから知り合った。 第一印象はあまりよくなかったが お互いに恋愛対象が男ということと 単純に話が合うということから 今では非常に仲の良い友人である。 玲は知り合った当初から 強引な面があり 今日のように 唐突に用件を突きつけてくるのも 非常によくあることだった。 「三歳にいいひと見つけちゃったんだよ!」 玲には仲の良い恋人がいて、 いつまでたっても独り身の三歳を 二人そろって心配してくるのだ。 三歳からしてみれば 余計なお世話なのだが、 二人が本気で心配している というのがひしひしと伝わるため うっとおしさよりも、面映ゆさと 心がじんわりと温まるような 優しさを感じるのだった。 「とにかく! 1日でも早く会わせたいから! 来週末の日曜、空けておいてよ!」 勝手に週末の予定を決めてしまう 親友の玲にやや呆れつつも 三歳は笑い声をまじえて返事をする。 「わかったよ、日曜だな?」 「うん!じゃ、時間と場所は また連絡するから!」 玲は満足気にそう告げ ふたりは通話を終えた。 そして週末、 とあるカフェにやって来たのは 物腰の柔らかい好青年だった。 ぱっちりとした二重に、 美しく整えられた眉、 艶のある黒髪、 それに長く通った鼻筋が印象的な、 キリッとしたイケメンだった。 「こちら、津本 京(つもと けい)くん、 こないだ、ゲイバーで知り合ったんだ。」 玲の恋人が、 青年を指し示しながら告げる。 そして、その横でニコニコしている玲が 続けざまに三歳を紹介した。 「そんでこっちが沢田三歳! 俺の友達ね!いま23歳!」 三歳がぺこりと頭を下げると 津本は美しく口角を上げ呟く。 「若いね、僕なんてもう三十路だよ。」 そんな事を言いながら、 若々しく美しい歯をみせる津本。 ただ笑顔をみせられた だけだというのに、 三歳の心はいとも簡単に ときめいてしまった。

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