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第52話
それから、仕事が終わるとさらわれたり竜次郎が泊まっていったりする日が何日か続いた。
「あっ……りゅうじろ…、こえ、出ちゃうから…っだめ…っ」
「誰も聞いてねえから気にすんな」
「や、うそ……っ、あっ、」
会って二人きりになると竜次郎の手が伸びてきて、色々されてしまう。
これは少し意外だった。学生時代、同級生達の大きな関心はやはり女性や恋愛に関することだったが、竜次郎とはあまりそういう話もしなかったし淡白なのかと思っていたからだ。
もちろん、嫌ではない。しかし深夜、寝室や湊の部屋でならそれもいいと思うが、ここ……事務所ではどうか。
奥の部屋に二人きりになるなり、応接用のソファで竜次郎の足の間に座らされてシャツの中に忍びこんできた手にいたずらされているが、昼日中からこんなことをしていて本当にいいのかと不安になる。代貸としての資質を問われたり、組長や日守から怒られたりしないのだろうか。
湊は求められると嬉しくて中々拒否できないので、誠に勝手ながら竜次郎に自制してほしいと思う。
「嘘だと思うなら後であいつらに聞いてみろよ」
「そんな…の、気をつかって言わないだけ、だから…っ」
からかいながら足の付け根の際どい場所を焦らすように撫でられて、汚れるからとたくしあげさせられたロングシャツに顔を埋めるようにして震える。
赤くなった耳を甘くかじられ、衣服をかき分けて入り込んだ大きな手にゆるく扱かれただけで息があがってしまう。
「は、……ぁっ、あっ、っりゅ……じろ、」
「感じやすいなお前は」
「だって……っ、う……竜次郎、大人になって…っ…エッチになった……」
「嫌か?」
ちゅっとうなじにキスをされて、竜次郎の手の中のものがピクンと震えた。
少しは時と場所を、と注意しようと思ったのに、後ろから硬くなったものを押し付けられれば体の奥が疼いて頭が痺れてなにも考えられなくなる。
嫌なわけがない。
「エッチな竜次郎……すき……」
ぼうっと呟けば、背後で苦笑する気配がした。
「お前がそんなんだからなぁ……」
「?……なに……?」
「とりあえずいっとけ」
「えっ、……ぁ、あっ」
解放を促す動きで扱かれて、甘ったるい声が溢れる。
気持ちがいい。けれどその瞬間は、実はいつも少しだけ怖い。
……終わりと、同義だから。
「あ、あっ………!」
終わりを切なく思う心とは裏腹に刺激に弱い体はすぐに限界を迎え、竜次郎の掌を汚す。
息を整えているとこめかみにキスをされて、唇にも欲しいと顔を上げようとした時。
「代貸」
一段落するのを見計らっていたように扉の外から声がかかり、一瞬で『代貸』の表情になった竜次郎は、待ってろ、と湊をソファの上に残し部屋の外へ出て行った。
のろのろと乱れた衣服を直しながら、やっぱり聞かれてたよね、と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
竜次郎はすぐに戻ってきた。
…が、不本意そうな表情から、続きができなくなったことがわかる。
案の定。
「湊、悪い。ちょっと出てくる。お前は屋敷の方に戻っててくれ」
「うん。気を付けてね」
スーツのジャケットを羽織りながらの「なるべく早く戻る」という言葉に、湊はなるべく気を遣わせないよう、笑顔で頷いた。
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